超正統派ユダヤの恐すぎる“通夜の儀式”がテーマのホラー映画『ザ・ヴィジル~夜伽~』が心臓・脳・魂に悪すぎて超ヤバい!【編集長厳選作品紹介】
ユダヤ教がベースとなったホラー映画といえば『ポゼッション』、超正統派ユダヤのドラマといえば最近では『アンオーソドックス』などが挙げられるが、『ザ・ヴィジル~夜伽~』はこの二つの要素、つまり「ユダヤホラーと超正統派ユダヤ」が融合した、おそらく世界唯一の作品ではないだろうか。しかも、ベールに隠された超正統派ユダヤの「死者を弔う儀式」が題材とある。超宗教的要素と超自然的、そして悪魔的要素が詰まったストレスフルな作品であるのは間違いない。
◆超正統派ユダヤと陰謀論的超正統派ユダヤ
超正統派ユダヤとは、ユダヤ人の中でも特にユダヤ教の独自ルールを厳格に守り、なによりも教義を学ぶことを最優先と考えている人々を指し、ネットやテレビもなく、情報から切り離された閉鎖的共同体を作って暮らしていることで知られている。また、いわゆる「ユダヤ陰謀論」好き界隈では、今世界TOPのユダヤ人権力者たちの下支えをしている人々こそ、この超正統派ユダヤだともいわれている。超正統派ユダヤの中には就労せずにとにかく神を畏れて日々祈りを捧げる人々がいるのだが、その祈りが全ユダヤの繁栄、つまり世界経済の中心ともいえるユダヤ資本家たちのパワーの源になっているというのだ。だからこそ、彼らに対してイスラエル政府から補助金が出ているともいわれている。
◆監督の意気込みがやばい
さて、そんなミステリアスな存在である彼らがホラー映画の題材になるなど、誰が予想しただろうか。しかも驚くことに『ザ・ヴィジル~夜伽~』はエンタメに昇華されることなど絶対にあり得ないはずの“ホロコースト”もホラー要素に組み込んでしまった。
かつて日本の文藝春秋が発行していた雑誌『マルコポーロ』が、ホロコーストを否定する根拠なき内容の記事を掲載したことで物議を醸し、当時の社長や編集長が辞任・解任。雑誌も廃刊した「マルコポーロ事件」は有名だが、600万人の罪なきユダヤ人の大虐殺をテーマに扱うということが、どれだけ大きな責任を伴うかは想像に難しくない。監督が“決死の覚悟”で危険な領域に迫るこの映画を撮ったのは間違いないだろう。海外の資料を読むと、これが初監督となるキース・トーマス氏はユダヤ教に於ける宗教的指導者ラビが経営する学校に通い、そこで教育の修士号を取得、さらに医学研究にも携わった人物だという。また、本作の撮影前には世界最大級の超正統派ユダヤコミュニティ、ボロパーク(ブルックリン)を徹底的に調査し、実際にラビと何時間もエクソシズムや宗教学について語りながらストーリーを作り上げていったのだという。なるほど。おそらく、ユダヤコミュニティを熟知した彼の智識と執念が評価されたからこそ許された題材なのだろう。
◆あらすじ
ユダヤ教の信仰を捨てた若者ヤコブは、死人の棺を一晩見守るというユダヤ教の慣例「夜伽」の役割を謝礼目当てで引き受ける。しかし認知症を患う未亡人は何かにひどく怯えており、ヤコブもまた恐るべき存在と対峙していることに気づく。ジャンルとしてのオカルトホラーに、ユダヤ教やホロコーストの歴史を組み合わせた異色作。本作が長編監督デビューとなるキース・トーマスが、見えないものへの恐怖をじわじわと煽る演出の冴えで魅せる。
◆悪霊から守る「夜伽」の儀式
ユダヤ教では数千年も昔から、夜伽という通夜の儀式が行われてきたのだという。死者に見張り役が付き添い、聖書を朗唱してその魂を慰め、見えない悪霊から守るのだ。付き添いは家族か友人が務めるのが普通だが、適任者がいない場合は他人を雇い、付き添ってもらうという。この儀式がこの作品のテーマだ。
生活に困窮し、精神病も患う主人公のヤコブは信仰を捨てたにもかかわらず、ある“いわくつきの死人”の付き添いをお金目当てで引き受けることになる。しかし、そこはお化け屋敷のように不気味な空間で、自らのトラウマ、そしてホロコーストの生き残りであった死者の苦しみが蘇る場所で、次々と恐ろしい悪夢が彼に襲いかかる。一体“悪魔”は何者なのか……。
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2024.10.02 20:00心霊超正統派ユダヤの恐すぎる“通夜の儀式”がテーマのホラー映画『ザ・ヴィジル~夜伽~』が心臓・脳・魂に悪すぎて超ヤバい!【編集長厳選作品紹介】のページです。ホラー、儀式、ユダヤ人、ホロコースト、ラビ、夜伽、シッチェス映画祭などの最新ニュースは好奇心を刺激するオカルトニュースメディア、TOCANAで