「魚にエサをやる」という“最強の快楽行為”を村田らむが取材! 人間の根源的欲求を叶える南郷水産センターへ!

――B級スポット、樹海や禁断の土地、ホームレス取材を得意とするルポライター村田らむが寄稿!

 9月某日、大阪出張のついでに滋賀県に向かった。“ついでに”と書いたが、それほど近い距離ではない。

 なんば駅から80分ほど電車で移動してやっと石山駅に到着、そこからさらにバスに乗ってしばらく南下する。

 琵琶湖から流れる瀬田川の洗堰(可動堰)の場所のあるバス停でおりる。水をせき止めて、治水したり、利水するための大掛かりな堰だ。現在の堰はもう60年近く前に作られたものだ。堰は電気式であり、機械類もまたかなり古い。ゴツゴツとして無愛想な機械がズラリと並んでいる姿は、スチームパンクもののSF作品のようで非常にかっこいい。

 そして堰の上は橋になっていて、渡ることができるのが、なおよい。

 そしてこの橋を渡ったところにあるのが、目指す『南郷水産センター』である。

 なんの目的でここにやってきたのか? と言えば

「魚にエサをあげるために……」

 である。読者の皆様からの

「バカじゃなかろうか?」

という声が聞こえてくるようだ。

画像は「Getty Images」より引用

 動物にエサをあげる、というのはかなりの快楽行為だと思う。でもなかなか、東京に住んでいるとその欲求は満たせないのだ。近所の野良猫にエサをあげていたら、すぐに

「ネズミなども集まってくる」
「猫の糞害が広がる」

 などとクレームが来るだろう。

 マンションのベランダで鳩にエサをあげても隣近所の人に怒られてしまう。

 だったら、公園の魚にでもエサをあげるか~と出かけてみてもやっぱり

「エサやり禁止」

 と書いてある。

 僕は西荻窪に住んでいた時、よく井の頭恩賜公園や善福寺公園を散歩していたがやはりエサやりは禁止だった。

 エサやりをすると池の水質が悪くなるから仕方ないのだが、それでもエサを欲しそうに寄ってくる鯉を見ていると、ムクムク

「エサやり欲」

 が湧いてくるのであった。

 そんなストレスを発散するために、わざわざ電車とバスを乗り継いで『南郷水産センター』へやってきたのだ。

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