自動書記(オートマティスム)とはなにか? 体内麻薬の異常分泌、憑依状態での執筆…アンドレ・ブルトンが体現したこととは?
自動書記(オートマティスム)とはいったい何なんだろうか? 端的に言えば、無意識の状態で、ある種の憑依状態となりながら、心の純粋な部分を抽出して、支離滅裂なことを書くという詩の実践だ。この時代の芸術家たちは第一次世界大戦の影響が激しい中で少し気が狂っていた。なんせ初めての世界大戦であったのだから尋常じゃないくらい人が死んだ、あまりに不条理な出来事の数々、すべては無意味、生きているのも死んでいるのも同じことという暗黙の共通認識があった。実際に当時拳銃が街中で発砲されるのはそれほど珍しいことではなかった。
自動記述(オートマティスム)を生み出したといっても過言ではないアンドレ・ブルトンは(実際にはそれ以前でチューリッヒのダダ、フーゴ・バルなどによって生み出されたものだが)、「最もシュルレアリスム的な行為は拳銃を持ち、無作為に人々を撃ち殺すことだ」と言っていた。結局のところ、自動記述は時代背景として、つまり、政治、戦争、構成、機械、広告、組織、それに勿論社会もろもろ何らかの要因や力によって私たちは完全にコントロールされているという悪夢の可能性に抗うものだったと思っている。
資本主義にしても、大企業が広告を通じて消費者の欲望を完全にコントロールして、市場すら完全に支配してだれからのコントロールも受けることなく世界を支配する構図というものがあった。広告や資本が意識の中にまで散歩して入り込み、あなたたちを縛る、構成形態そのものが絶対的なものであると、社会からはみ出して生活を放棄するなと強制され、供給者と国とが結託して個人レベルにおいても逃げ出すことが出来なくなるんじゃないかという恐怖の陰謀史観を植えつけられ、意識をコントロールされることの恐怖がどんどんあなたたちに染み渡ってきた。

ブルトンは文学の構成からの脱出、また意図がどうであれ結果としては芸術運動という範疇に収まらず秩序、意識して構成したものすべてに抗っていたのだし、それは戦争でボロボロに傷ついた時代の後遺症的共鳴があったからだし、生身の政治的前衛を体現するものだった。またフロイトのヴィジョン、セックスの隠された厳しい現実を念頭に、夢に関するポジティヴな生の可能性と無意識的欲望の肯定性とを結びつけた、それは過去のダダの自殺者たち、ブルトンの友人だったジャック・ヴァシェやジャック・リゴー、アルチュール・クラヴァンなどがすべてに対する徹底的な否定の体現者であったのに対して、その絶対的な否定性を徐々に自動書記という詩の実践というかたちで肯定へと高めていくものでもあった。ブルトンは否定を肯定するための実は極めてポジティヴな生の体現者だった。
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