人間のテレポーテーション技術が完成しても絶対に使いたくないヤバい理由が判明

画像は「Big Think」より

 昨年末、NASAジェット推進研究所やハーバード大学が、光子キュービットを44kmテレポートさせることに成功した。“実態”を伴わない瞬間移動を可能にする量子テレポーテーション技術が現実のものになろうとしている。

 だが、テレポーテーションという発想そのものには、ある大きなパラドックスが内在しているのだ。知的探求サイト「Big Think」(1月10日付)を参考に紹介しよう。

 まず距離を超えて人間を瞬間的に転送することは、物体の移動とは本質的に異なる。物体や人間の移動は車や電車や飛行機に乗ったりして、連続的に行われるが、テレポーテーションは断絶を要求するからだ。超高速で移動すればまるでテレポートしたかのような印象を与えるかもしれないが、それは本来のテレポーテーションではない。

 テレポーテーションでは、発進地点で人間を分解し、到達地点で再構成することが想定されている。実体のある人物が空間を連続的に移動しているわけではない。

 量子テレポーテーションは、量子の非局所性を応用している。量子もつれにある粒子同士は空間を超えて、片方の粒子の状態がもう片方の粒子の状態を決定する。量子テレポーテーションは、この現象を利用して、遠隔地に量子状態を転送することで成立する。

 さて、それでは空間を超えて転送された人はどうなるだろうか? ここには考えるべき哲学的問題がある。発進地点での人間の分解と、到着地点での再構成は、見方によっては、殺人と再生と言えないだろうか? また、分解された人物と再構成された人物は同一人物と言えるだろうか?

 物理的な組成が同じであるなら同一だとするのは非常に分かりの良い話であるが、世界は私のこの唯一の視点からしか見ることはできないということを考えると、事はそう単純ではない。私と全く同じ物理的組成を持ち、記憶も受け継いでいる完璧なクローンが目の前にいるとしよう。このとき、私には何が見えるだろうか? おそらく、私には私のクローンが見えるだろう。そして、私は私のクローンの目から私を見ることはできないはずだ。

 テレポーテーションにおいても、分解される私と再生される私は上記のような絶対に乗り越えられない視点の唯一性によって分断されることだろう。やはり、テレポーテーションにおいて私は死に、私の記憶と身体を持つ私ではない誰かが転送されると考えるべきだ。未来学者のミチオ・カク氏はこのようなパラドクスは将来において解決され、テレポーテーションは現実の技術になると楽観論を述べているが、人間のテレポーテーションが実現するとすれば、それはパラドクスを解決したからではなく、ある種の割り切りをしたからだろう。

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