生きてる生物間で記憶の移植実験ついに成功!恐怖体験は14世代受け継がれる…「先祖の祟り」はガチと判明!

 今まで自分が体験していないことを記憶しているはずはないのだが、実は、そうとも言い切れないというから不気味だ。意図的に記憶を操作する技術が開発されていたり、親や先祖から受け継がれる“記憶”もあるという――。

■RNAの注入で記憶の移植に成功

 自分がほかの何者でもないというアイデンティティー(自己同一性)の基礎となる記憶。

 自分がどこで育ち、誰と知り合いなのか、そして人生においてどのようなイベントを経験してきたのか、さらにはカードの暗証番号や各種のパスワードなどなど、記憶に残されていなければ社会生活は事実上不可能になるだろう。

 まさに自分が自分であることの証となる記憶だが、もしも体験したことのない記憶がよみがえってきたり、逆に体験したはずの記憶がきれいさっぱり失われていたとしたら、きわめて深刻な話になる。文字通りのアイデンティティークライシスだ。

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画像は「Unsplash」より

 だが、驚くべきことに生物の記憶とは操作可能なものであることが2018年の研究で報告されている。カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)の生物学者のグループが、訓練されたアメフラシのRNAを移植することで、記憶まで一緒に移植できることを発見しているのである。

 研究チームはアメフラシの尾に軽度の電気ショックを定期的に与え、アメフラシの防御反応を強化した。アメフラシは身体を収縮させることで身を守っているのだが、電気ショックを与え続けるうちに、その防御反応はより顕著になり、時間も長くなっていったのである。初めて電気ショックを与えたアメフラシは防御反応を1秒ほどしかとらないのだが、この強化学習をしたアメフラシは電気ショックを受けると50秒もの間、身体を収縮させるまでに至ったのである。

 次に研究者は、この強化学習したアメフラシの神経系からRNAを抽出し、何の学習も行っていないアメフラシに注入した。ちなみにRNAとは細胞内のメッセンジャーとして機能し、DNAからタンパク質を作る“指令書”を運ぶ役割を果たす。

 そしてRNAが注入されたアメフラシは、驚くべきことに電気ショックを受けると顕著な防御反応を見せたのだ。つまり記憶が“移植”されたのである。

 逆に何も学習していないアメフラシのRNAを注入された学習済みのアメフラシは顕著な防御反応を見せないことも確かめられた。こちらも記憶が書き換わったのだ。

 アメフラシのような比較的単純な神経細胞系を持つ生物の記憶を、RNAの移植によって書き換えるというアイデアは、実は1966年にさかのぼるものであるという。

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アメフラシ 画像は「Wikimedia Commons」より

■“記憶”は遺伝する?

 RNAの移植によって生物の記憶が書き換わるということは、将来的に我々の記憶を操作できる技術が登場する可能性を孕むものであり、実に不気味な話といえる。

 遺伝子情報の“書き換え”という意味でさらにミステリアスなのは、親や先代の“記憶”が子孫に植え付けられている可能性があることだ。我々は個体として自分が体験していない“記憶”を持っているというのである。

 米・エモリー大学の研究チームが2013年に「Nature Neuroscience」で発表した研究では、桜の花のニオイを恐れるようにトレーニングされたマウスの子どもや孫が、学習せずとも同じく桜の花のニオイを恐れることが実験で確かめられている。子や孫は初めて嗅ぐ桜の花のニオイに恐怖を感じたのである。つまりニオイの“記憶”が遺伝しているということになる。

「妊娠する前でさえ親の経験は、次の世代の神経系の構造と機能の両方に著しく影響します」と報告書は結論づけている。この“記憶”と行動は最大で14世代に受け継がれる可能性があるということだ。

 それまで一度も嗅いだことがないニオイに特定の感情を抱いたことがあるという人は、それはひょっとすると先祖から受け継がれた“記憶”であるのかもしれない。

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