【パンデミックと新宇宙時代】ビル・ゲイツが民間宇宙事業を批判! イーロン・マスク「インスピレーション4」の裏側(ケロッピー前田解説)

「パンデミック到来に備えよ!」と、2015年にビル・ゲイツは予言した。

 そして、それは現実となり、人類は新型コロナウイルスの猛威に侵され続けている。ワクチンこそが唯一の解決策と喧伝され、ビル・ゲイツこそがパンデミックの勝者のように思われた。しかし、2021年5月、ゲイツは突然の離婚騒動で表舞台から後退し、世界はパンデミック以降に向かって動き始めている。

 そこで台頭してきたのがビリオネアが巨額を投じる民間の宇宙開発競争である。イーロン・マスクのスペースX、ジェフ・ベゾスのブルーオリジン、そして、宇宙旅行に特化して飛行機型の宇宙船を手がけたリチャード・ブランソンのヴァージン・ギャラクティックなど、20年越しの彼らの成果が2020年代、具体的な形となって宇宙へと飛び立つことになったのだ。これからどんな未来が始まろうとしているのか?

 ケロッピー前田がカウンター視点で巷のニュースを相対化、いまを生き抜くためのヒントやアイディアをお届けしたい。合言葉はひとつ、ただひたすらに生き残れ!

 大好評だった「新型コロナウイルスの時代」の続編として、宇宙編を数回にわたって連載する。

<過去の記事> 

【番外編・第1回】最新情報・新型コロナの正体!
【番外編・第2回】アメリカ大統領選挙その後
【番外編・第3回】迷走する東京五輪、IT長者対決 ゲイツvsマスク 
【番外編・第4回】身体改造最前線としての脳改造!
【番外編・第5回】イーロン・マスクのニューラリンク完全解説!  
【番外編・第6回】まだまだ終わらないビル・ゲイツ離婚騒動
【番外編・第7回】ゲイツ離婚の波紋、ワクチン世界支配の終焉
【番外編・第8回】ベゾスvsマスク ビリオネア宇宙戦争

【緊急特報】米大統領選オクトーバー・サプライズ
【緊急特報】まだまだ終わらない!怒涛の法廷闘争へ!

【パンデミックと新宇宙時代】イーロン・マスクのスペースX

【宇宙編・第3回】世界は「インスピレーション4」に感動したか?

 2021年10月4日(日本時間5日)、ジェフ・ベゾスのブルーオリジンが、伝説的なSFテレビドラマ『スタートレック』でエンタープライズ号のカーク船長を務めたウィリアム・シャトナーが同社の有人宇宙船「ニューシェパード」で宇宙に行くと発表した。予定日は10月12日(悪天候のため、13日に延期)とされ、打ち上げに成功すれば、現在90歳の彼は、地上100キロの「カーマン・ライン」を越えた最高齢の記録を更新することとなる。同ミッションには、クリス・ボシュイゼン、グレン・デ・ブライスという民間人の他、ブルーオリジンの宇宙飛行担当の副社長オードリー・パワーズが搭乗する。

 一方、10月5日、カザフスタンのバイコヌール宇宙基地から打ち上がられたソユーズには、ロシアの女優ユリア・ペレシルドと映画監督クリム・シペンコが乗り込んでおり、同日、国際宇宙ステーション(ISS)に無事に到着した。彼らはISSに12日間滞在し、史上初となる宇宙での映画撮影に挑むという。スペースXも、トム・クルーズ主演の映画撮影を宇宙で行うことを発表していたが、ロシアに先を越される形となった。

 

 前回お伝えした通り、9月15日(日本時間16日)に宇宙に飛び立ったスペースXの民間人だけによる宇宙飛行計画「インスピレーション4」は、3日間の地球周回軌道滞在を経て、無事に帰還を果たした。このミッションは、Netflix独占で乗組員たちを主人公とするドキュメンタリーシリーズとして配信された。最終回となる第5回は、ファルコン9による発射からクルードラゴンでの生活ぶり、地球への帰還と家族との再会という宇宙飛行の一部始終をまとめたものとして、9月30日に公開された。

 前回、すでに関連動画は見せているので、それぞれの乗組員たちの感想をまとめておく。

 サイアン・プロクターは、2009年にNASAの宇宙飛行士募集で最終選考まで残った経験を持つ黒人女性。乗組員のなかでも最年長のため、終始落ち着ている印象だ。「一生の絆を結んだ、私たちは家族よ」と自分を含めた乗組員たちの健闘を称えた。

 クリス・センブロスキーは、妻子を持つ会社勤務のエンジニアで、見た目も温厚そうな白人男性。「宇宙から地球を見ると、生命のはじまりがどうあるべきかを強く感じた。僕らはまだ、長い本の始まりのところにいるんだ」と興奮気味に語った。

 ジャレッド・アイザックマンは、十代で立ち上げた決済処理サービス事業で大成功したビリオネア、ジェット機パイロットの資格も持つ冒険家で、自ら約2億ドル(約200億円)を投じて、自分を含む4名の民間人による宇宙飛行計画を立案実行した。地球に帰還するなり、最も気にかけていたのは、小児がん専門のセントジュード病院への寄付金が目標の2億ドルに達していたからどうかだった。もちろん、目標額をクリアーした。「素晴らしいミッションを完了した。でも、ゲームは始まったばかり、僕らが生きているうちに人類を乗せた宇宙船が火星に到着するだろう」と自信に溢れた表情は、イーロン・マスクの意思を継いで大役を果たした充実感に満ちていた。

 ヘイリー・アルセノーは、10歳のときにセントジュード病院に長期入院して膝の小児がんを克服し、その後、同病院の医師助手となった。民間人の宇宙飛行とともに同病院への寄付金を集めることが、アイザックマンが発案した宇宙旅行が「金持ちの贅沢な遊び」でなく、地球に暮らす人々にも貢献する冒険となるためのテーマだった。それだけに、アルセノーはこのミッションの中心的な存在だった。そして、彼女にとっても宇宙飛行のクライマックスは、セントジュード病院の子供たちとのオンラインによる対話だった。一人一人の質問に丁寧に答え、「私にできるなら、みんなにもできるよ」と子供たちを強く励まし続けた。無事に帰還すると「私の人生で一番大きなことを達成して幸福を感じている。本当に素晴らしい冒険だった」と締め括った。

 視聴者は誰もがアルセノーに感情移入するだろう。最終回は人間ドラマ要素が多く、乗組員たちの安全を気遣う家族たちの様子を描き出される。宇宙飛行における死のリスクは、発射と帰還の2回ある。ロケット発射は、その瞬間を見るができるし、火の玉のような噴射口の軌跡が無事に天高く昇っていけば、もう大きな心配はない。それに比べて、地球への帰還は、大気圏突入の際に約3500度の高温となるため、約7分間、宇宙船との交信が途絶える時間がある。大気圏突入に失敗すれば、交信は途絶えたまま宇宙船が燃え尽きてしまう。家族や関係者が多く見守るなか、管制センターとのオンラインで突入のアナウンスが伝えられると、しばらくの沈黙が続く、緊迫した時間が流れ、クルードラゴンからの第一声が聞こえた途端に、皆が一斉に歓声を上げた。

 このドキュメンタリーを通じて、痛感させられるのは宇宙旅行の死のリスクである。大気圏からの脱出と突入の際にその可能性が高まるからこそ、富裕層をターゲットに“宇宙観光”をアピールするブルーオリジンは、地上100キロ止まりなのだろう。ちなみに、国際宇宙ステーションが約400キロ、インスピレーション4が3日間を過ごした周回軌道は約580キロ、僕らがイメージする宇宙から見る丸い地球を楽しむなら、なるべく高い方がいい。

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