心霊懐疑派も絶句! 誰もが恐怖体験をする“絶対出る”ホテル怪談がヤバい!
ほっとする間もなく、クローゼットから、新たな気配を感じたヌーさんが振り返ると、今度は女の黒い影が歩いてきた。その影はベッドの上に座り、夫を見つめた。恐怖におののくヌーさんの目の前で、影が夫に頬ずりをしようとしている。
「これも危ない…!」夫の身を案じたヌーさんは反射的にベッドから飛び起きて、部屋中の電気をつけた。振り向くと、黒い影は灯の中に消えてしまった。「今すぐここを出よう」――騒動で目を覚ました夫が言い放つ。寝ていると思ったが、彼もまた女の影に襲われたことを感じていたのだ。すぐさま娘を抱え上げる。娘の体がやけに熱い。高熱だ。急いで荷物をまとめた夫は「チェックアウトして車を回してくるから、娘をたのむ」と言い残し、全員分の荷物を抱えて部屋から出て行った。
バタン。夫が出たと同時に、部屋の電気が落ちて暗闇に包まれた。真暗闇の中、あの女の気配がする。ヌーさんは意を決して、おそるおそる女に語りかけた。「明日、お寺へ行って供養してあげるから、どうか許してください」
しばしの静寂――電気はつかない。夫が廊下を走ってくる音が聞こえる。「扉を開けてくれ!」暗闇の中、扉に駆け寄りドアノブに手をかける。扉が……開かない?!内鍵などかけていない。高熱にうなされ始めた娘を抱きかかえ、ヌーさんは自分の中で女への恐怖が怒りに変わっていくのがわかった。「幽霊かなんだか知らないけど、娘だけには絶対手を出させないわ!」
目を閉じ、意識を集中してお経を唱えた。3回唱え終わった瞬間、シャワー室の扉がバタンと閉まり、部屋の電気がパッとついた。同時に夫が扉を開け、ヌーさんの手を引いて部屋から連れ出した。
車に乗り込み、ホテルから離れる。ふとサイドミラーを確認する。遠ざかるホテルと移り込む並木の下に女の影が見えた気がした。大通りに出て家路に向かう頃には、娘の熱はすっかり引いた。ヌーさんの体験談である。
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