「奇妙な夢ほど脳に良い」コロナで奇妙な夢が増えた理由 変な夢を見る理由
■現時点でAIにはない人間の脳の“夢見る力”
ご多分に漏れず今回のコロナ禍で我々の起床時の経験は多くにとって多様性を失ったものになっている。それはつまり刺激と新規性に欠けた生活を余儀なくされたということでもある。
しかしその一方でこの期間中、我々の夢はより奇妙なものになっていることも報告されているという。おそらく我々の脳は、自粛生活の単調さと戦うために、これまで以上に奇妙な夢を提供しているのだという。奇妙な夢は退屈で管理された日常に新風を呼び込んで過剰に適合した状態に風穴を開けるための脳のメカニズムなのである。
ホエル氏によれば脳の過剰適合仮説を裏付ける神経科学研究からの証拠がすでにあるという。たとえば、起床時に新しいタスクを繰り返し過剰なまでに反復学習してみることで過剰適合の状態が引き起こされ、就寝時の脳は夢を生み出すことによってこのタスクを一般化しようとするというのである。
そしてもし睡眠不足の場合、一般化と記憶にどのような影響があるのかを測定することで“夢の効果”が浮き彫りになるということだ。
またホエル氏が探求したいと思っているもう1つの分野は、「人工的な夢」のアイデアである。小説、映画などの映像作品、あるいはビデオゲームのような外部刺激が夢の「代替」として機能する可能性があり、夢の性質をたとえばVR技術などを使って強調することによって、睡眠不足の認知効果を遅らせるのに役立つ可能性があると仮定しているのだ。つまりこうしたコンテンツが夢の代わりになり得ることになる。
AIによる深層学習の発見によって、我々の脳の秘密もまた徐々に浮き彫りにされているといえるだろう。AIは学習のスイッチをオフにすることができるが、脳ではそれを行うことはできず、脳は常に新しいことを学んでいるのである。
「人生は時々退屈です。夢はあなたが世界のモデルにあまりにも適合しないようにするためにあります」とホエル氏は語る。
将棋や囲碁において人間を凌駕するポテンシャルを備えた今日のAIだが、AIにまだ欠けているのは人間の脳の“夢見る力”であるといえそうだ。時には“悪夢”の場合もある奇妙な夢の様相だが、日々の生活がマンネリに陥らないために脳が“夢”を上映してくれているとすれば、我々の脳が備えている深遠なメカニズムに驚かされるばかりである。
参考:「Nautilus」、「Science Daily」ほか
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