死ぬまで踊り続ける奇病「ダンシングマニア」の真相とは? 本当にあった“感染する狂気”

 しかし、多くのタランティズムは人々の誤解から発生していたとの指摘もあり、踊っている人を見て勝手に毒グモに咬まれたせいだと解釈して自らも踊り始めることで、多くの人々を巻き込む大規模なパニックに至ったケースがほとんどであることを、宗教史家のエルネスト・デ・マルティーノ教授が1959年に示唆している。そしてもちろん「踊りのペスト」と「タランティズム」はお互いに関係のない別々の現象であることになる。

 医師や歴史家はもちろん、芸術家や作家も魅了し続ける奇妙な出来事がこの「踊りのペスト」なのだが、社会病理として捉えるアプローチもある。実際に「踊りのペスト」は人類史で最初に記録されている「集団ヒステリー」の一形態であるというのだ。

「踊りのペスト」の参加者の多くが心理的に混乱していることは確かであり、社会不安や孤独感から踊りに加わっている者もいた可能性がある。また、貧困からの現実逃避や、カルト宗教的な熱狂が「踊りのペスト」の引き金になっていたとも考えられる。

 日本の江戸時代に起きた民衆運動「ええじゃないか」のように、集団で踊りながら抗議活動やデモ活動が起きる例もあり、ダンスは物理的な抗議の強力なツールにもなり得る。しかし「踊りのペスト」が意図的な抗議活動であるという説は否定されているようで、抗議というよりはもっと闇が深い社会病理である可能性のほうが高そうである。

死ぬまで踊り続ける奇病「ダンシングマニア」の真相とは? 本当にあった感染する狂気の画像3
画像は「Wikipedia」より

 しかし、とりわけ不思議なのは「踊りのペスト」が17世紀半ばまでに完全に消滅したように見えることで、これ以降に発生したという記録は残っていない。天然痘ウイルスのように根絶された症状なのか、それとも何かのきっかけでまた起きることあるのだろうか。謎に包まれた歴史的レア現象であることは確かだ。

参考:「BBC」、ほか

文=仲田しんじ

場末の酒場の片隅を好む都会の孤独な思索者でフリーライター。
興味本位で考察と執筆の範囲を拡大中。
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