ファイザーが画期的「アルツハイマー病の予防薬」を隠していた? 臨床試験せずデータ隠蔽… 米大手紙が指摘!

※ こちらの記事は2019年6月7日の記事を再掲しています。

 高齢化に伴い、世界的に患者が増加しているアルツハイマー病。未だ有効な治療法はなく、多くの患者やその家族が苦しんでいる疾病の一つである。だが、今月4日付の米大手紙「ワシントン・ポスト」のスクープ記事によれば、米国の大手製薬会社ファイザーは自社の薬がアルツハイマー病の画期的な予防薬となりうることを把握しながら、臨床試験も行わないばかりか、そのデータを隠蔽しようとしているというのである——。これが今全米で大ニュースになっている。

ファイザーが画期的「アルツハイマー病の予防薬」を隠していた? 臨床試験せずデータ隠蔽… 米大手紙が指摘!の画像1
画像は「The Washington Post」より引用

■事件の経緯

 報道によると、ファイザーの研究者らは2015年、自社の医薬品「エンブレル」にアルツハイマー病のリスクを64%減らす効果があるのを発見した。エンブレルは全世界で関節リウマチなどの治療に用いられている薬で、同社の大ヒット商品の一つである。

ファイザーが画期的「アルツハイマー病の予防薬」を隠していた? 臨床試験せずデータ隠蔽… 米大手紙が指摘!の画像2
画像は「Daily Mail」より引用

 同社の研究者らは当然、この発見が本物であるか3000〜4000人規模の臨床試験を計画した。費用は8000万ドル(約87億円)と見積もられ、計画は内部の審査委員会にかけられることとなった。2018年2月の内部資料には『エンブレルはアルツハイマー病を安全に予防、治療し、進行を遅らせる可能性があります』との文言もあった。

 しかし、3年の審査の後、同社はエンブレルの臨床試験を見送る決定をした。同社の発表によると、事前の統計調査が「厳密な科学的基準を満たさなかった」といい、エンブレルにはアルツハイマー病の予防効果はないとみなしたのである。また、この決定の後、同社はアルツハイマー病などを扱っていた研究部門を閉鎖、300人の従業員を解雇している。

 同社のデータを見たという科学者たちも同社の決定に反対の声を上げており、詳細なデータを公表するように求めている。アルツハイマー病の専門家たちも、患者により良い選択肢を提示したいと、情報を提供するよう声を上げ始めている。

ファイザーが画期的「アルツハイマー病の予防薬」を隠していた? 臨床試験せずデータ隠蔽… 米大手紙が指摘!の画像3
画像は「Daily Mail」より引用

■ファイザーが臨床試験をしない理由

 アルツハイマー病の治療薬を開発する試みは失敗続きで、どの製薬会社も長年苦戦を強いられている。それなのになぜ、ファイザーは有望な薬の臨床試験を却下したのか。それにはエンブレルの特許が関連しているとみられる。

 同社はエンブレルの20年間の独占特許権を取得し、1998年に販売を始めた。その特許権は2018年に切れており、仮に同社がエンブレルのアルツハイマー病予防薬としての効果を臨床試験で証明しても、莫大なコストやリスクに対し、得られるメリットはほとんどないというのである。

 近年、新薬にかかる時間と開発コストは増加の一途にあり、その一方で承認のハードルは高くなっている。無事発売されたとしても特許切れまでの短い期間に、どれだけ利益を上げられるかという問題もある。特許が切れれば他社からジェネリック薬が発売され、当然利益は減少するからだ。世界的な大企業といえど、たとえ画期的な商品になりうる可能性があったとして、大きな利益を生まない薬にかけられる余裕はないということなのだろう。

 果たしてエンブレルはアルツハイマー病治療の光になれるのか? 研究の行方が懸念されている。

参考:「Washington Post」「Daily Mail」ほか

TOCANA編集部

TOCANA|UFO、心霊、予言など未知の世界の情報を発信、好奇心と知的欲求を刺激するメディア
Twitter: @DailyTocana
Instagram: tocanagram
Facebook: tocana.web
YouTube: TOCANAチャンネル

※ 本記事の内容を無断で転載・動画化し、YouTubeやブログなどにアップロードすることを固く禁じます。

人気連載

事故物件よりもウツになる「暗黒物件」とは? 差し押さえ物件のリアルな現場

事故物件よりもウツになる「暗黒物件」とは? 差し押さえ物件のリアルな現場

不動産競売物件情報サイト「BIT」では、元所有者が税金滞納などで差し押さえられた...

2023.05.16 10:15連載
神の啓示で建てられた謎のビル「東京媽祖廟」に潜入=新大久保

神の啓示で建てられた謎のビル「東京媽祖廟」に潜入=新大久保

今夜21時からの『世界ふしぎ発見!』(TBS系)は、国内テレビ初取材となる台湾の...

2023.04.22 07:00スポット
爆弾魔「ユナボマー」と交流した日本人学者の考察 IQ167の天才が送った「異常な手紙」とは?

爆弾魔「ユナボマー」と交流した日本人学者の考察 IQ167の天才が送った「異常な手紙」とは?

19時から放送される「世界の何だコレ⁉︎ミステリー」(フジテレビ系)では、FBI...

2023.03.15 10:45事件
妊娠するラブドールに死体絵画… 芸術家が集まる別府の特異性とは? 驚異の陳列室「書肆ゲンシシャ」が所蔵する奇妙な本

妊娠するラブドールに死体絵画… 芸術家が集まる別府の特異性とは? 驚異の陳列室「書肆ゲンシシャ」が所蔵する奇妙な本

――【連載】驚異の陳列室「書肆ゲンシシャ」が所蔵する想像を超えたコレクションを徹...

2023.02.12 14:00ARTの連載
生命の起源は「左回り」だった! 負の右回りエネルギーを無効化する縄文由来の“水”を天才科学者が開発! 努力ゼロで心身が整い生活の質が向上

生命の起源は「左回り」だった! 負の右回りエネルギーを無効化する縄文由来の“水”を天才科学者が開発! 努力ゼロで心身が整い生活の質が向上

 広瀬学氏は、波動・スピリチュアルグッズの通信販売会社オプティマルライフ株式...

2023.05.19 13:00スピリチュアル

ファイザーが画期的「アルツハイマー病の予防薬」を隠していた? 臨床試験せずデータ隠蔽… 米大手紙が指摘!のページです。などの最新ニュースは知的好奇心を刺激するニュースを配信するTOCANAで

トカナ TOCANA公式チャンネル