ディアトロフ峠事件は「硝酸の霧」が原因? 研究者らが新たな仮説を提唱、9人怪死ロシア最恐未解決事件に新展開

 ロシアの研究者グループが、今なお謎多きディアトロフ峠事件の原因が「極秘のロケット実験で発生した硝酸の霧」にあったという新しい説を発表して注目を集めている。

 ディアトロフ峠事件とは、1959年2月2日、当時のソ連領ウラル山脈北部の「死の山」と呼ばれる峠で、スノートレッキング中の男女9人が謎の死を遂げた未解決事件のことだ。深夜、彼らは安全なテントを切り裂き、防寒着も身につけないで雪山に飛び出した。そして極寒に耐えられず命を落とした。

 捜索の結果、彼らの遺体が発見されたが、その遺体に外傷による骨折があったり衣服から高い放射能が検出されたりと、不可解な点が多かった。また女性メンバーの舌や眼球がなくなっているなど、単なる遭難事故と結論付けるには明らかに異常な状況であった。

 しかし、当局は捜査を打ち切り、「未知の不可抗力」による事故として処理してしまった。事件はリーダーのイーゴリ・ディアトロフの名から「ディアトロフ峠事件」と呼ばれるようになり、ロシア史上でも最も不可解な事件の一つとされている。

・ロシア最恐9人怪死の未解決事件「ディアトロフ事件」の仮説7つ! 放射線まみれの衣服、舌や目のない死体、謎の発光体…

ディアトロフ峠事件は「硝酸の霧」が原因? 研究者らが新たな仮説を提唱、9人怪死ロシア最恐未解決事件に新展開の画像1
内側から切り裂かれたテント(画像は「Wikipedia」より)

 この興味深い仮説は、ディアドロフ峠事件の発生から64周年を記念して先月開かれた記者会見で紹介された。記者会見では、1959年の遭難者捜索に参加し、以来この事件を研究してきたウラジスラフ・カレリン氏が「ディアドロフ峠の悲劇は雪崩によって引き起こされた」と主張するロシア政府関係者や科学者の調査結果に疑問を呈し、興味深い仮説を述べたのだ。

 カレリン氏は、現場写真を確認すると雪から石が突き出ていたことを指摘、雪崩説を覆すと主張。更に、彼と彼の現地調査チームが「当時、現場付近の上空を舞う火の玉を目撃した」と証言したのである。「私たちのほかにも、この地域でそのような物体を観察した目撃者がいました。UFOは絶えず進行方向を変えていた」 とカレリン氏は当事を振り返って語っている。

 彼らが目撃した未確認飛行物体の正体については、カレリンの同僚であるヴァディム・スキビンスキー研究員が興味深い推測をしている。スキビンスキー氏によると、1950~60年代のロシアのミサイル実験に関する機密解除された文書の中に「1959年1~2月、ソ連で6発のミサイルがポリアルニー村の近くから発射された」ものがあったという。そのうちの1発はR12ロケットで、10~15トンの硝酸が発射現場の近くにいたハイカーたちの頭上に降り注いだのではないかと推測している。この物質が実質的に「毒の霧」となって漂い、テントの中に入り込んだため9人の若者たちは前後不覚となり、全員死亡したのではないか……という説だ。

 彼らはこの仮説を発表するにあたり、ディアドロフ峠事件に対する軍の関心が非常に高かったことをはじめ、同時代の捜査をめぐるいくつかの特異な点を指摘。さらにこの事件の捜査に当たった関係者全員が、その後「放射線検査に回された」ことに触れた。そして最終的に、ロケット事故によって引き起こされた悲劇はロシアの「権力者たち」によって隠蔽されたと結論付けた。

 だが一方で、スキビンスキー氏はあまり当時の権力者たちを非難していない。むしろ当時の人々が「働いていた状況を理解する必要がある」とし、ディアドロフ峠事件は「国の防衛研究にふたをすることがいかに重要視されていたかを推測している」と強調した。

 この仮説が正しいと言えるのかについては、研究者のオレグ・アーキポフ氏が「ロケット爆発の証拠書類が存在する」と明言しているものの、スキビンスキー氏は「ディアトロフ峠に登山にいった若者たちの死に関することは、まだ機密指定を解除するには早すぎる」とも述べている。

 記者会見では決定的な証拠となるようなものは提示されなかったそうだが、最近の科学的研究によって、解明されつつあったディアドロフ峠事件の謎が再燃したといえるのではないだろうか。

参考:「Coast to Coast AM」ほか

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文=飯山俊樹(ミステリーニュースステーションATLAS編集部)

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