チベット僧の脳は瞑想により「8歳若い」と判明! マインドフルネスにアンチエイジング効果も?

「瞑想習慣で脳の加齢を遅らせる」

 しかしながらリンポチェ氏のこの8歳若い脳は本当に瞑想習慣の賜物なのだろうか。宗教家の家に生まれ育ったリンポチェ氏の幼いころからの生活習慣のなかに、瞑想よりも脳の若さを保つ要素があるのではないかとも考えられなくはないのだ。

 そしてBrainAGEの分析では、リンポチェ氏の脳が早期に成熟したこと示すエビデンスも得られたのである。

 人間の脳には本来は20歳代後半から発達する領域があるという。例えば自己コントロールや注目の制御に関わる領域などである。

「瞑想がこれらの領域を早期に成熟させているのかもしれないというのは理にかなっています。瞑想はこれらの領域とこれらが持つ機能を強化できると考えているからです」(デイビッドソン教授)

 これまでの研究でも、特定の種類の瞑想がこれらの制御スキルを強化できることが示されているという。幼い時分から瞑想を始めることで、精神的に早熟になる可能性があることになる。

 早熟でありながらその後の脳の若さが保たれるというのであるとすれば瞑想は“いいこと尽くめ”ということにもなるが、どのくらいの瞑想をすればこの効果を発揮できるのか、あるいは単に瞑想だけでなく、宗教家のもとに生まれたリンポチェ氏の特殊な成育環境が脳の若さに関係しているのではないかといった疑問も生じてくる。

 要するに、彼の若い脳が瞑想の結果なのか、彼の人生における別の要因なのか、それとも上記のすべてなのかは不明なのだ。 たとえば、チベットの高山で生まれた人々は、脳の加齢がより遅くなる可能性があり、あるいはリンポチェ氏は健康的な食事を取り、汚染の少ない地域に住んでいるからこそ脳の若さを保っていられるのかもしれない。リンポチェ氏に似た背景を持つ人々のデータが得られればより研究は進展してくるだろう。そして脳の若さを保つことが、イコール長寿に結びつくのかについてもまだよくわからないということだ。

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画像は「Wikipedia」より引用

 しかしそれでも今回の研究によって、瞑想は、実践する人にとって少なくとも健康に資するものであることは示唆された形になったと、この研究には関与していないオハイオ州立大学ウェクスナー医療センターの神経学者、キラン・ラジニーシ博士は言及している。

「ストレスは老化を引き起こすものであるため、(ストレスが弱ければ老化が進まないというのは)生物学的には理にかなっています。心理的ストレスは間違いなくその一部ですが、細胞レベルで起こるストレスでもあり得ます」(ラジニーシ博士)

 ラジニーシ博士には、1日数分の瞑想を行うことで脳の加齢を遅らせることができるのは間違いないと断言している。脳の健康という観点から瞑想を始めてもよいのだろう。

参考:「Live Science」、ほか


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文=仲田しんじ

場末の酒場の片隅を好む都会の孤独な思索者でフリーライター。
興味本位で考察と執筆の範囲を拡大中。
ツイッター @nakata66shinji

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