物質には“固体かつ液体の状態“が存在する? 「水に浸したスポンジのよう」英大学研究
2019年、英エジンバラ大学の研究者らがこれまでの物質の概念を覆す、ある衝撃的な事実を突き止めたとして話題に。なんと、原子番号19の元素である「カリウム」には、「固体でありながら液体でもある」という特殊な状態が存在することが証明されたのだ。物理学者アンドレアス・ハーマン氏は、この想像しがたい状態を「水に浸したスポンジのようだ」と説明している。
カリウム原子を高圧・高温下に置いて観察を行ったところ、「鎖の溶解変移」が始まり、やがて「鎖が溶解した相」と呼ばれる液体化が確認されたとのこと。さらに、この現象は他の元素でも起こり得ると考えられており、あらゆる面での応用が期待されているという。
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※ こちらの記事は2019年4月9日の記事を再掲しています。
物質の状態には固体、液体、気体が存在する。これにプラズマを加えて4つとする場合もあるが、基本は3つである。このたび、このうちのどれにも当てはまらない特殊な物質の状態が存在することが証明された。
科学ニュース「Science Alert」(3月9日付)によると、英エジンバラ大学の研究者らが、原子番号19の元素である「カリウム」には固体でもあり液体でもある状態が存在することを突き止め、その成果が科学誌「Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America」に掲載されたという。
固体かつ液体である状態……想像することさえ難しいが、エジンバラ大学の物理学者アンドレアス・ハーマン氏は次のような例えで説明している。
「いわば水に浸されたスポンジのようなものです。ただ、そのスポンジ自体も水でできているんですけどね」(ハーマン氏)
固体のカリウムは単純な格子構造を持つ物質だ。しかし、高圧・高温環境に置くと性質が変わるという。こうした現象は他の元素でも起こることが知られている。たとえば、ナトリウムは高い圧力をかけると絶縁体になり、リチウムは高圧・低温下で超伝導体になる。
先行研究ではカリウムに高い圧力をかけると、四角い構造の中に5つの筒状になった原子が配置される複雑な構造に変化することがわかっていた。筒状の原子はそれぞれ4つの鎖で結び合わさっているが、ここでさらに高温状態に置くと、この鎖が消失するという。研究者らはこの現象を「鎖の溶解変移(chain-melting transition)」と呼んでいる。
今回、研究者らはこの現象を解明するために、高圧・高温下に置かれた2000個のカリウム原子の状態をハイパワーのコンピュータシミュレーションで観察した。すると、2~4ギガパスカルの圧力をかけると、カリウム原子は先述した状態に変化。この状態は極めて安定しているため、400~800ケルビンの高温でも状態を維持したそうだ。しかし、構造は維持したまま、それぞれを繋ぐ鎖の溶解変移が始まり、液体化が起こったという。研究チームはこの状態を「鎖が溶解した相(chain-melted phase)」と呼んでいる。この状態はカリウムに限らず、ナトリウムやビスマスといった元素でも起こると研究者らは考えているとのことだ。
今回の研究結果についてハーマン氏は「この不自然な状態を他の物質でも作り出すことができれば、あらゆる面で応用が可能になるでしょう」と語っている。これまでトカナでは物質が究極的には意識から発生している可能性に言及してきたが、物質そのものについても科学的な理解が揺さぶられていることが明らかになった。身近な物質についてもまだまだ知られていない謎が隠されているかもしれない。今後の研究に注目したい。
参考:「Science Alert」ほか
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