「人生を破壊された」 世界一のエリートセックスクラブを作った男に何が?

 46歳にして一文無しとなるも一発逆転して巨万の富を築いた男がついにその波乱万丈の半生を語っている。しかしそのサクセスストーリーの過程で失ったものも大きく、もしタイムマシンで46歳に戻れるなら別のことをしただろうとも語っている――。

リーマンショックで無一文に

 元モデルで会員制の高級セックスクラブ「Snctm(サンクタム)」の創業者、デイモン・ローナー氏が先日、ポッドキャスト番組で自身の半生について初めて語り話題になっている。

 生まれも育ちもニューヨークのローナー氏は若い頃にはモデルとして活動していたが、メンタルに問題を抱えていて薬物に依存するようになり、リハビリ施設に通っていた時期もあったという。

 モデル業からは事実上引退したローナー氏はレストランの起業やスタートアップ企業への投資など、いくつかの事業で成功を収めた。この時期にモデルのメリッサ・バーンハイムと出会い、後に結婚してロサンゼルスの高級住宅街でセレブな生活を送ることになる。

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デイモン・ローナー氏 「Daily Star」の記事より

 妻のメリッサさんがめでたく妊娠し、順風満帆な生活が続くかに思われた矢先、あのリーマンショックがローナー氏のビジネスと投資を直撃し、翌年の2009年に財政破綻を余儀なくされることになってしまった。

「家を失い、車2台を失い、所有していたレストランを失い、投資していたエナジードリンク会社も失いました」とローナー氏は英紙「The Sun」に語っている。愛用していたロレックスの腕時計などの夫妻が持っていた高級ブランド品の数々も売り払うことになったという。

 無一文になったローナー氏と家族は、父親が持つバリ島の別荘にしばらく身を置くことにした。

 商魂のあるローナー氏はバーのオーナーと知り合いになってパーティーを主催するなどの活動を見せたが、地元のマフィアに狙われたりするなどもあり、3年間の滞在の後にアメリカへ戻ることになった。

 本国へ戻ればそこに待ち構えているのは無一文であるという現実である。しかもローナー氏はまだ100万ドル(約1億4000万円)の借金を抱えたままであったのだ。

 妻の母親の家の空いた部屋に身を寄せていたローナー一家だったが、結局のところローナー氏は2013年に自己破産をすることになった。

「何をすればいいのか分かりませんでした。ビバリーヒルズの駐車場係員の仕事に応募しましたが採用されず、仕事は見つかりませんでした。私は失業中の46歳の男性で、1ドルも稼ぐことができませんでした。信じられないほど恐ろしい時期でした。どうやって家族を養えばいいのかわかりませんでした」(ローナー氏)

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「Daily Star」の記事より

世界最高級セックスクラブを発足

 仕事も見つからず次の一歩が踏み出せないローナー氏のインスピレーションをかき立てたのは、スタンリー・キューブリック監督、トム・クルーズとニコール・キッドマン主演の映画『アイズ・ワイド・シャット』であった。映画を観た同氏は登場人物たちが謎の邸宅で開催される秘密のセックスパーティーに魅了されたのだ。

「私はあの映画で見たようなもの、億万長者や有名人がそこにいるような場所、非常にプライベートで独占的なクラブを作るための冒険に乗り出しました」(ローナー氏)

 そしてローナー氏は自己破産した同じ年に、世界で最も入会条件が厳格なセックスクラブである「Snctm(サンクタム)」を設立した。

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「Daily Star」の記事より

 Snctmに入会できるのは厳しい審査をパスした富裕層や有名人、あるいはトップクラスの容姿の持ち主のみである。プライベートルームを利用できる最上級会員になるには6万ポンド(約1000万円)の年会費を納めなければならない。もちろんイベントごとの参加費は別途支払うことになる。

 そして入会に際してはオカルティックな儀式があり、新規入会者は指先に刺し傷を作って少量の血を滴らせる“血の誓い”を行う。この儀式の噂が伝わり、Snctmは秘密のイルミナティ・カルトではないかとの憶測も招いたが、実際には完全な演出であるということだ。

 幸運にもこのSnctmは事業として大成功することになった。自己破産しどん底の境遇にいた男がまさに一発逆転の満塁ホームランを放ったのである。

 こうして発足から数年でローナー氏は億万長者になったのだが、その一方でローナー氏は2児の父親としての役割をずいぶん怠ることになってしまった。これが結婚生活と家庭生活に亀裂を引き起こす結果となり、離婚という最悪の結末を迎える。

「ある意味、Snctmは癒しのプロセスでした。あるレベルでは破壊的で、完全にワイルドでクレイジーでした。特別になりたかったし、認められたかったし、愛されたかったのです。(しかし)最終的にSnctm は私が幸せや平和を見つけられる場所ではないことに気づきました」(ローナー氏)

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「Daily Star」の記事より

 2019年にSnctmを売却したローナー氏だが、発足当時のことを振り返ると複雑な思いに駆られるようである。「タイムマシンで戻れるなら、こんなこと(クラブ経営)はしなかったでしょう」と後悔の念も口にしている。

「しかし私は(当時)一文無しで自暴自棄になっていました。何かをする必要がありました。それは自分の選択であり、私はそれを選択しました」(ローナー氏)

 それでも決して人のせいや社会のせいにすることなく、ローナー氏はそれが自分が選んだ道であることを認めている。

 現在は新しいクラブ「シークレット・ガーデン」の開業に着手しているというローナー氏。“無一文”からのサクセスストーリーには逞しさも感じるが、失うものも大きかったということになるだろう。しかし別れたメリッサさんと子供たちとの関係は今も続いているということで、ローナー氏が失ったものは時の経過が取り戻してくれるのかもしれない。

参考:「Daily Star」、「The Sun」ほか

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文=仲田しんじ

場末の酒場の片隅を好む都会の孤独な思索者でフリーライター。
興味本位で考察と執筆の範囲を拡大中。
ツイッター @nakata66shinji

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