古代エジプトで発掘された「サッカラの飢餓像」のミステリー! 歴史を逸脱した“オーパーツ”か!?

 歴史的な人物像ではさまざまな権力者や英傑、あるいは才子佳人などが表現されているが、どういうわけか痩せ衰え飢餓に苦しむ人物を彫った謎の人物像が存在する。見る者をいたたまれない気持ちにさせる「サッカラの飢餓像」をどう理解すればよいのか――。

「サッカラの飢餓像」のミステリー

 異様なまでにやせ細った人物の彫像は芸術作品なのか、それとも何らかのメッセージを後世に伝えるモニュメントなのか――。

 古代エジプトで作られたとされる「サッカラの飢餓像(The Starving of Saqqara)」は、その起源と来歴については謎に包まれており、作品としての信頼性についても議論の余地が残されている。

 サッカラの飢餓像は高さ67センチ、重さ約80キロの石灰岩の彫刻であり、一対の裸の座像が表現されている。人物の一人は男性で、もう一人は子供を抱いた女性であると考えられており、細長い頭とやせ細った長い手足が特徴的である。

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 彫像の表面に残された顔料の痕跡は、かつてはペイントされていたことを示唆している。像の台座にはいくつかの古代の碑文が刻まれているのだが、その言語はまだ特定されていない。サッカラの飢餓像は現在、カナダ・モントリオールのコンコルディア大学が所蔵している。

 サッカラの飢餓像は1950年代以前の時期に、古代エジプト、ギリシャ、ローマの古美術品の熱心なコレクターだったヴィンセントとオルガ・ディニアコプロス夫妻の所有物となった。ディニアコプロス夫妻がこの像をどこでどのように入手したのかは不明であることに加えて、その名前にもかかわらず、この像と古代エジプトの首都メンフィス郊外の広大な墓地であるサッカラとの関係もまた不明だ。

 ディニアコプロス夫妻はフランスからカナダ・モントリオールに移住し、サッカラの飢餓像もまたカナダに持ち込まれることになった。1950年代には夫妻の家族経営のギャラリー「アルスクラシカ」に展示されていたのだが、1967年にヴィンセント・ディニアコプロスが亡くなった後、サッカラの飢餓像を含むコレクションの多くは家族によって梱包され、自宅の地下室に数十年間にわたって保管されていた。

 1999年、オルガ・ディニアコプロスは息子、デニスがコンコルディア大学の教員を務めていたこともあってか、同大学に家族の骨董品コレクションの管理を要請した。

 管理業務を担当したクラレンス・エプスタイン氏はコレクションを研究する一方で、サッカラの飢餓像を同大学内で再び一般に公開することになった。

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専門家「この彫刻は本物でなければならない」

 ちなみに像はいくつかに切断された状態で保管されており、公開に際して慎重に断片を接着して組み立てられた。

 組み立てを終えて展示室で公開した次のステップはそれを理解することであった。ディニアコプロス家自身もこの像の起源や歴史について不確かだったため、エプスタイン氏はこの彫刻が特定されることを期待して世界中の研究者に連絡を取った。その中には大英博物館、ケンブリッジ大学、イスラエル博物館などの専門家も含まれていたが、残念ながらサッカラの飢餓像が何であるかを確信を持って答えられる者は誰もいなかった。

 サッカラの飢餓像はエジプト先王朝時代に遡ると考えられているのだが、エプスタイン氏はこの彫刻は墓か埋葬地から出てきた可能性があり、古代エジプトの支配者によって征服された人々を表現したものであるとの考えを述べた。

 彫刻された人物のやせ細った身体的特徴によってヌビア人である可能性が示唆されたが、一方でユダヤ人がエジプトから追放された頃に作られたのではないかとの指摘もある。またこの彫刻は現代に作られた偽物ではないかと考える者もいる。

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 サッカラの飢餓像の信ぴょう性は、専門家が同様の像を知らない事実により疑問視されている。

 それにもかかわらずこの彫刻は本物であるとする声も根強く、 たとえばコンコルディア大学の専門家はこの彫刻はフランスからの輸出が法的に許可された記録が残されていることを指摘している。この時代は今よりも骨董品の取引が活発に行われていたことを考慮すると、この彫刻は本物であると彼らは主張している。

 またスイスの美術史家ジャン・ジャック・フィヒター氏は、経験豊富なコレクターであるヴィンセント・ディニアコプロスがこれを購入し、高額な費用をかけてモントリオールまで輸送しているからにはこの彫刻は本物でなければならないと言及している。

 もちろん専門家でも間違いを犯すことがあると主張する声もあるかもしれないが、いずれにせよこの彫刻は今も謎のままであり、コンコルディア大学によって調査と研究は続けられている。

 サッカラの飢餓像が時間軸と歴史状況を逸脱した“オーパーツ”であったり、地球外文明に由来する可能性もありそうだが、いずれの推論も今のところは保留せざるを得ない。サッカラの飢餓像の謎を解く糸口が今後見つかるのかどうか、気長に事の推移を見守るしかなさそうだ。

参考:「Anomalien.com」「Ancient Origins」ほか

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文=仲田しんじ

場末の酒場の片隅を好む都会の孤独な思索者でフリーライター。
興味本位で考察と執筆の範囲を拡大中。
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