今世紀中に人類が滅亡する確率は「6分の1」 オーストラリアの哲学者が算出!

 前代未聞の猛暑に襲われた夏であったが、気候変動や小惑星衝突などで今後“人類滅亡”する確率はどのくらいなのか。ある哲学者によれば今世紀中に人類が滅亡する確率は6分の1であるという――。

人類が「生存上の大惨事」に陥る可能性は6分の1

 気候変動や小惑星衝突、あるいは全面核戦争やAI(人工知能)の暴走など、現在の我々はいくつもの“人類滅亡シナリオ”に直面している。

 では近々人類が滅亡する可能性はどのくらいあるのだろうか。

 オックスフォードを拠点とするオーストラリアの哲学者、トビー・オード氏は人類絶滅のリスクをテーマとした『The Precipice』(2020年刊)という本を出版した。同著の中で彼は、今後1世紀に我々の種が「生存上の大惨事」に陥る可能性は6分の1であると推定している。

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画像は「Pixabay」より

 6分の1といえばサイコロで特定の数字が出る確率であり、なかなか現実味のある確率のようにも思えるがいかがだろうか。

 この著書とその主張は当時話題を呼び、最近ではオーストラリアの政治家、アンドリュー・リー氏がメルボルンでの演説で取り上げている。

 気候変動、全面核戦争、生物工学的に作られた病原体から、AI(人工知能)の暴走や小惑星衝突に至るまで、今後数十年間にわたって我々が“人類滅亡シナリオ”に直面すると認めるのは心理的に難しいことだ。

 そこで確率という数字の出番である。そこでオード氏は今聖域中の人類滅亡は6分の1であると設定したのである。

 この数字をどう考えればよいのか。これらの質問に答えるには、まずは別の質問に答えなければならない。それは確率とは何か? である。

 確率の最も伝統的な見方は頻度主義(frequentism)と呼ばれ、母集団から単純に確率を計算することだ。したがって母集団のデータが多ければ多いほど確率は正確になると考えられる。

 しかし“人類滅亡”は1度きりのイベントであり、母集団となるデータはない。するとこの頻度主義は人類滅亡の確率にとってナンセンスなのだろうか。

 そこで登場するのは“人類滅亡シナリオ”であり、例えば地球に壊滅的被害をもたらす小惑星の衝突を月に衝突している隕石の数を調べることなどで母集団のデータを集めて計算することができる。

 フランスの科学者、ジャン=マルク・サロッティ氏が2022年にこの計算を行い、小惑星衝突によって人類が絶滅するレベルの危機が今世紀中に起こる確率を約3億分の1と算出した。

 もちろんデータや計算方法によって結果は異なってくる。オード氏は小惑星による絶滅のリスクを100万分の1と見積もっているが、その数字にはかなりの不確実性があることを認めている。

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適切な危機感を持たなければならない

 確率について考えるもう1つの方法は、イギリスの統計学者トーマス・ベイズにちなんだベイズ主義(bayesianism)と呼ばれるものだ。ベイズ主義では母集団が変動するものととらえ、他の確率と比較してどの結果がより可能性が高いのか低いのかを検証する。きわめて簡単に言うと、ベイズ主義者は複数の確率にランキングをつけるのである。

 ベイズ主義の観点からはオード氏は小惑星の衝突による滅亡は100万分の1で、気候変動による滅亡は1000分の1、AIによる滅亡は10分の1と考えている。

 ここでの難点は、ベイズ確率の初期推定値(事前確率)がかなり主観的であることだ。したがって人類が滅亡する確率は“6分の1”という主張もまたオード氏の主観的な見積もりである。

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 しかしこの“6分の1”という確率は絶妙な数字であると、豪ボンド大学のデータサイエンス教授、スティーブン・スターン氏は指摘している。

 今世紀中の人類滅亡が“100分の1”だとすると無視できるほど小さいと感じるかもしれないが、一方で“3分の1”というと人々のパニックを引き起こしたり、逆に“陰謀論”だとして揶揄されるかもしれない。

 その点で“6分の1”は人々に適切な危機感を与えるに相応しい数字であるという。気候変動や核拡散などのリスクには相応の注目が集まらなければならないのだ。将来について絶望視することも楽観視することもなく、相応の危機感と緊張感を持って各人がこの混迷の時代をサバイブしていかなければならないのだろう。

参考:「Anomalien.com」「The Conversation」ほか

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文=仲田しんじ

場末の酒場の片隅を好む都会の孤独な思索者でフリーライター。
興味本位で考察と執筆の範囲を拡大中。
ツイッター @nakata66shinji

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