「時空の制限から逃れる方法」を米軍が確立していた!? CIA極秘文書「ゲートウェイ体験レポート」で発覚、7日間のプログラムも

 体外離脱とはいったいどのような体験なのか。かつてアメリカで体外離脱体験を国防に活用する方法が真剣に検証されていたことが、機密解除されたCIA文書から明らかになっている。

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■公開された機密文書「ゲートウェイ体験レポート」とは

 米ソ冷戦時代、CIAは当時のソ連がサイキック(超能力者)を軍事活用するための研究を本格的に推進していることを知り、危機感を募らせていた。

 そこで米軍が主体となって各種の超能力研究プロジェクトが立ち上げられていたことがかつての機密文書からわかってきている。代表的なものには遠隔透視(リモートビューイング)能力を諜報活動に活用する「スターゲイト計画(Stargate Project)」がある。

 そして、そもそもこの“スターゲイト”とはどんな意味で使われているのか。

 SFドラマのタイトルにもなったスターゲイトは環状遺跡の呼称だが、一部の専門家によれば、スターゲイトはゲートを越えて到達する一種の“あの世”のことであるという。あの世であるスターゲイトは時空を超越した宇宙と一体化した世界であり、ここに到達できた者はたとえば遠隔透視能力なども獲得できるのである。

 ではどうやってこのスターゲイトに到達することができるのか。そこで冷戦時代のアメリカで行われた調査研究が「ゲートウェイ体験(Gateway Experience)レポート」である。ゲートウェイ体験をすることで時空を超えた世界へ意識を送り込むことができるという。

 ソ連のサイキック研究に遅れをとるわけにはいかなかったアメリカ当局が注目したのは、ロバート・モンローの一連の体外離脱研究だ。

 1958年に睡眠学習を行っている時に偶然に体外離脱(OBE)を体験したモンローは独自に研究を深め、1971年にそれまでの研究をまとめた著書『Out of the Body』(邦題『体外への旅』ハート出版)を出版する。この著作によって「体外離脱体験」という用語が社会に広まった。

 そして1983年、米陸軍総司令官から任命されたウェイン・M・マクドネル中佐は、モンローの研究成果を下敷きにしたゲートウェイ体験と体外離脱体験の総合的理解のために「ゲートウェイ体験レポート」の作成に取り組むことになったのだ。

 ウェインは、ゲートウェイ体験のプロセスを理解するために客観的な科学的方法を採用した。その骨子は次のようなものだ。

●プロセスの物理的側面を理解するための生物医学的調査。
●人間の意識の性質と機能を説明するための量子力学に関する情報。
●時空間の次元を説明するための理論物理学と拡張された人間の意識がそれを超越するための手段。
●体外離脱状態の現象全体を物理科学の言語に取り入れるための古典物理学(そしてオカルトの意味合いの汚名を取り除く)。

 ウェインによれば、人間がゲートウェイ体験をするにはまず脳の準備が整っていなければならないという。

 脳の準備のための鍵を握るのが超越瞑想(transcendental meditation、TM)とヘミシンク(Hemi-Sync)技術である。超越瞑想(TM)を実践するにはある程度のトレーニングが必要とされるが、モンローによって開発されたヘミシンクという脳波をコントロールするサウンドをヘッドホンで聞きながら瞑想することで、比較的容易に半覚醒状態に入ることができるとされている。

 こうした脳の準備を経て実践されるゲートウェイ体験のプロセスは次のようなものになるという。

●落ち着いた状態に誘われる。
●血圧が下がる。
●循環器系、骨格、その他の臓器系が毎秒7~7.5サイクルで振動し始める。
●共鳴の増加が達成される(心拍の音量が3倍に増幅される)。
●結果として生じる音波は地球の静電界と一致する。
●身体と地球、そして他の類似した調律された精神は、単一のエネルギーの連続体になる。

 こうしてゲートウェイ体験による意識の体外離脱によって人間の意識は宇宙と一体になるのである。

■ゲートウェイ体験を可能にする7日間のプログラム

 ウェインのレポートの内容は徐々に難解になっていく。ウェインは物質とエネルギーの本質そのものに目を向け、厳密な意味においてこの世には固形物は存在せず、物質は単にエネルギーの状態が変化したものであると定義している。そして我々が現実と呼んでいるこの世の事象は“3Dホログラム”であるというのだ。

 宇宙に満ちている「絶対状態」と呼ばれる無限大のエネルギーは、加速も減速もせずに完全に静止しているという。したがってゲートウェイ体験は、時空を超越した状態であり、すべての時間の位相が現れるので、過去・現在・未来に関する情報を取得できるのである。

 そしてレポートではゲートウェイ体験を可能にする7日間のトレーニングプログラムが解説されている。

 ゲートウェイ体験の到達度合いは細かく分かれていて、まず目指すべきはフォーカス12である。フォーカス12では物理的現実を超えた次元との相互作用を開始するのに十分な拡張意識を一貫して達成することができる。そして遠隔透視なども可能になってくるということだ。

 レポートによれば、7日間のトレーニングプログラムで参加者の約5%がフォーカス12よりもさらに高次のレベルに到達するという。

 さらに意識が拡大したフォーカス15では、自分自身の過去にアクセスすることができ、フォーカス21では自分の未来を見て体験することができるという。

 しかしながらウェインは、ゲートウェイ技術を使用して体外離脱の状態で入手した情報の忠実性について懸念を表明している。「情報の歪み」が発生する可能性があるというのだ。

 実際にモンローの研究所で行われた実験でも、体外離脱して西海岸から東海岸に移動した意識が見たコンピュータ画面に記された一連の数字は、現実のものとは一致していなかったという。

 しかし、例えば1989年に遠隔透視者のアンジェラ・デラフィオラ・フォードは、逃走した元通関業者の男の行方を遠隔透視能力を使って追跡。男の場所を「ワイオミング州ローウェル(Lowell)」(現実には存在しない地名)と特定し、税関当局はワイオミング州のラヴェル(Lovell)の西100マイルで男を逮捕している。文字のスペルや数字などが完全に正確ではなくとも、おおよその特定はできるということになるのかもしれない。

 ともあれウェインはこの詳細なレポートで意識を拡大するためのより短期で、より効率的な方法を提供したのである。そして国防の目的でゲートウェイ体験を軍事利用することを推奨して筆を置いている。

 ひとつ気になるのはCIAが公開したこのウェインのレポートの25ページ目が欠落している点だ。25ページ目に何が書かれていたのか気にならないはずもない。有志がゲートウェイ体験で時空を超え、当時のウェインに会うことができればこの25ページを目撃できるかもしれない。はたしてその“偉業”に今後トライしてみる者が出てくるだろうか。

参考:「VICE」、ほか

 

※当記事は2021年の記事を再掲しています。

文=仲田しんじ

場末の酒場の片隅を好む都会の孤独な思索者でフリーライター。
興味本位で考察と執筆の範囲を拡大中。
ツイッター @nakata66shinji

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