【未解決事件】歴史上最も忌まわしい事件のひとつ「タマム・シュッド事件」とは…謎の遺体、スパイ、文字…まるで推理小説

 1948年にオーストラリアのアデレードで起きた「タマム・シュッド事件」(サマートン・マン事件と呼ばれることもある)は、歴史上の未解決事件の中で最も興味深い事件の1つである。

■未解決事件「タマム・シュッド事件」とは

 遺体のズボンの隠しポケットから、ペルシャ語で「終わった」「済んだ」という意味の「タマム・シュッド」と書かれた紙片が発見され、このことから、同事件は「タマム・シュッド事件」と呼ばれている。

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遺体写真と本に書かれていた「暗号」 「UFO Insight」の記事より


 1948年12月1日午前6時30分頃、オーストラリア南オーストラリア州アデレード近くのサマートンビーチの海岸で、スーツとネクタイ姿の身元不明の男性の遺体が発見された。

 数人の目撃者は、その男が11月30日の夕方から、砂浜に同じ姿勢で横たわっているのを見ていた。

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死体が発見されたアデレードの海岸 画像は「Wikipedia」より


 病理学者のジョン・バートン・クリーランドが、この遺体を調べるために呼ばれた。クリーランドは遺体の男を、この地域の一般的な人々よりも「英国的」な外見を持った、健康状態の非常に良い40歳から45歳の男性であると判断した。

 さらに手と爪の状態からみて、肉体労働に従事する人間でないことにも気づいた。興味深いことに、彼の足の形はダンサーや、先のとがった靴、ブーツを日常的に履いている人に、しばしば見られる形であった。

 体内には「異物」(毒)はなかったが、胃に血液が見つかり、その胃、腎臓、咽頭、および食道に著しいうっ血が見られた。そして、剖検(病理解剖)の結果、「決定的ではない」としながら、最終的にこう述べられた。「死は自然なものではなかったと確信される。提案する毒は、バルビツール酸塩または可溶性睡眠薬である」と。

 さらに奇妙なことに遺体の衣類のラベルは全て切り取られ、コートやスーツは古着の可能性があった(当時は戦時中であったため、古着の購入や衣類に名札を取り付けることはよく行われていたという)。また当時の男性のほとんどは、必ず帽子をかぶって外出したが、遺体の周囲には帽子がなかった。

 他にも、この遺体には数多くの奇妙な点があった。

 歯科所見の記録の中で、この遺体の歯と一致するものはなかった。そして、彼は自分の身元や衣服に身分を証明する物を一切持っていなかった。それはまるで、彼がまったく存在していなかったかのようであった。

 この男性の死を取り巻く状況が非常に奇妙だったため、当局は遺体に防腐処置を行う決定を下した。当時、オーストラリアの歴史の中で初めてのことであった。

 その後、アデレード駅の駅員が、遺体が発見された前日の11月30日11時に、鉄道クロークに預けられたスーツケースを発見した。そこは遺体の発見された海岸から近く、スーツケースのラベルは、男性の衣服のラベルとほぼ同じ方法で切られていた。警察は、そのスーツケースを遺体の男性の持ち物と考えた。

 スーツケースの中身はスリッパ、ガウン、パジャマ、下着、ひげそり用のアイテムなどと、ほとんどがごく普通の“旅の一式”であった。

 しかし旅行中のビジネスマンには、おそらく普通ではないモノも幾つか見つかった。例えば、プロの電気技師用のドライバー、意図的に尖らせたハサミ、テーブルナイフである。さらに、商船のコンテナにペイントする際に使用されるステンシルブラシもあった。

 他にも、当時オーストラリアでは入手できなかった英国製のブランドの綿糸が見つかり、それは、その男性がイギリスとつながりを持っていたことを示唆している。また、このスーツケースと遺体がまとっていたコートは米国製で、オーストラリアには輸入されていない製品だった。この男性が米国に旅行、もしくは住んでいたか、米国にいた人物から購入したと思われる。

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