「隕石に当たった人」の人生がヤバすぎる…確率0.000000625%「神がくれた」奇跡と不幸とは
地球に落ちてきた隕石に当たる確率は、一説によると160万分の1(0.000000625%)といわれているが、それでも可能性はゼロではない。かつて、実際に落ちてきた隕石に当たって負傷した人物がいたのだ。
■地球に落ちてきた隕石が人体に当たった事故
夏の夜空を賑わせているペルセウス座流星群だが、ピーク時には1時間に50個もの流れ星が夜空を彩るといわれている。儚く美しい流れ星だが、もしも大気圏で燃え尽きずに地表に落ちてきた場合、呼び名が変わりそれは隕石と分類されることになる。
しかし、この膨大な数の流れ星が隕石となる確率はきわめて低く、年間に約500個と推定されている。しかも、その大部分は海に落ちるため、回収される隕石はそのうちの10%、つまりは年に50個ほどだ。そして、落下地点のほとんどは人里離れた僻地である。
しかし、人々が住んでいる地帯に落下し、しかも人体にヒットする可能性は決してゼロではない。隕石の直撃を受けることが「絶対にない」とは誰にも言い切れないのだ。
1954年11月30日の現地時間午後2時46分、米アラバマ州タラディーガ郡シラコーガ近傍のオークグローブにある屋敷に隕石が落下した。
屋根を突き破ってリビングルームに侵入した約4キロのソフトボール型の隕石は、室内の大型ラジオに直撃して進路を変え、ソファでうたた寝をしていた住人の女性、アン・ホッジスさんの身体にぶつかり打撲傷を残す被害をもたらした。
地元メディアの報道によると、隕石がホッジスさんの居間に突入する前、周囲の人々は「ローマ製キャンドルの煙のような明るい赤みがかった光」を見たと主張している。また、別の地元住民は「巨大なアーク溶接のような火の玉」を見たと説明している。
この一件の後、奇遇にも近くに住んでいる政府の地質学者が現場に呼ばれ、正式に隕石であると判断された。
その後、メディア関係者をはじめ多くの人がホッジスさん宅に押し寄せたため、彼女の夫・ユージーンは対応に忙殺され疲労困憊に陥った。もちろん彼女もまた気苦労から体調を崩し入院することになってしまった。
■博物館に寄贈された“ホッジス隕石”
アラバマ自然史博物館のコレクションマネージャーであるメアリー・ベス・プロンジンスキー氏はニュースメディア「Insider」に次のように語っている。
「彼女は重傷を負って入院する必要があったためではなく、本件にまつわる事象全てによって不調をきたし病院に運ばれました。彼女はとても神経質な人で、周囲の人全員が好きというわけではありませんでした」(プロンジンスキー氏)
プロンジンスキー氏によると、彼女は隕石がラジオで跳ね返ったことで大怪我を免れた可能性があるということだ。
「屋根を通り抜けて弾速が遅くなったという事実と、ラジオで跳ね返ったという事実。もし彼女がラジオの下に横たわっていたら、足や背中を骨折していたでしょう。命を奪われるまではなくても、もっと多くのダメージを受けたはずです」(プロンジンスキー氏)
彼女の名前を冠して“ホッジス隕石”とも呼ばれるようになったこの隕石は、詳しい調査にやって来た米空軍に一度は没収されたという。しかし、それに納得がいかないボッジスさん夫妻と大家のガイ・バーディー氏は長い訴訟のプロセスを闘っていくことになる。
当時、ホッジスさんは次のように述べている。
「訴訟は私があれ(隕石)を手に入れる唯一の方法です。神は私のために隕石をもたらしてくれたのだと思います」(ホッジスさん)
最終的には大家のバーディー氏が500ドルの費用をかけて訴訟を解決し、隕石はホッジスさんの手に渡ることになった。
しかし、残念ながらこの時点で“ホッジス隕石”に対する社会的関心は衰え、彼女はそれにふさわしい買い手を見つけることもできず、結局は1956年に隕石をアラバマ自然史博物館に寄贈している。
その後、1972年にホッジスさんは腎不全のため52歳で亡くなった。世界で唯一、“隕石に当たった人”として記録に残されているホッジスさんの晩年は、残念ながらあまり恵まれたものではなかったようだ。広い意味で、それが隕石による影響だったとすればやるせない限りである。
参考:「Daily Star」、「Insider」、ほか
※当記事は2021年の記事を再編集して掲載しています。
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