28億年前の“ありえない”球体 ― オーパーツ「クレルクスドルプの球体」の正体

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By Paul Heinrich – Own work, CC BY 3.0, Link

 もし、人類が誕生する遥か以前、28億年も前の地球に、我々の知らない知的生命体が存在したとしたら…?南アフリカの鉱山から発見された、奇妙な金属球「クレルクスドルプの球体」。それは、自然物とは思えない完璧な形状と、ありえない年代から、「オーパーツ」の代表格として、長年激しい論争を巻き起こしてきた。果たして、この謎の球体は、本当に超古代文明が残した遺物なのだろうか。それとも、地球が生んだ驚くべき自然の造形美なのだろうか。

鉱山から現れた、不可解な特徴を持つ球体

 この奇妙な球体が発見されたのは、南アフリカのクレルクスドルプ近郊にある、葉ろう石(パイロフィライト)の鉱山だ。鉱夫たちが、柔らかい葉ろう石の層の中から、いくつもの硬い球体を発見したのが始まりだった。

 その特徴は、あまりに不可解で、多くの憶測を呼んできた。

◆年代: 球体が発見された地層は、約30億年前の先カンブリア時代のものと推定されている。もちろん、その時代に、これほど精巧な球体を作る知的生命体は存在しなかったはずだ。

◆形状: 直径は0.5cmから10cmほど。完全な球体というよりは、少し平らな球体や円盤状のものが多い。そして、その中央には、まるで鋳型で作られたかのような完璧な溝が1~3本刻まれている。

◆材質: 未風化のものは黄鉄鉱(パイライト)でできており、金属的な光沢を持つ。地表近くで風化したものは、赤鉄鉱(ヘマタイト)に変化し、赤茶色を呈している。

 これらの特徴から、一部の研究者やオカルト愛好家は、「これは知的生命体によって作られた人工物に違いない」と主張。人類以前に地球上に存在した、未知の超古代文明の証拠だとしてきた。

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By Robert Huggett – Own work, Public Domain, Link

科学が解き明かす“自然の造形美”―コンクリーションという答え

 しかし、地質学者たちは、この謎の球体に対して、極めて明快な科学的説明を提示している。それは、「コンクリーション」と呼ばれる、自然現象によって形成されたものだ、というのだ。

 コンクリーションとは、火山灰や泥といった堆積物の中で、鉱物の成分が核となる物質の周りに、長い年月をかけて同心円状に沈殿・凝固してできた塊のことだ。球体の中心を走る溝は、堆積物の層の隙間で成長が阻害されたことによってできた、ごく自然な模様だという。同様の現象は、世界中の様々な地層で見られ、決して珍しいものではない。

 つまり、クレルクスドルプの球体は、約30億年前に火山活動が活発だった湖の底で、微生物の活動などをきっかけに、ゆっくりと形成された「天然の石」というのが、科学界のほぼ一致した見解なのである。

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独り歩きする伝説―「NASAの技術を超えた」という誤解

 では、なぜこれほどまでに「超古代文明の遺物」として、センセーショナルに語り継がれてきたのだろうか。その背景には、いくつかの誤解と意図的な情報の誇張があった。

 例えば、「NASAの技術でも再現不可能なほど完璧なバランスを持つ」という有名な逸話。これは、ある個人が大学の研究所に球体を持ち込み、その結果を“誤解”して広めたものであり、後に研究所側が公式に否定している。

 また、「鋼鉄よりも硬い」という主張も、モース硬度で測定した結果、鋼鉄(4~8)よりも柔らかい5.0以下であることが判明している。

 さらに、この伝説を広めた初期の記事の中には、情報源として風刺タブロイド紙『ウィークリー・ワールド・ニュース』を引用しているものもあり、その信憑性には元々大きな疑問符がついていたのだ。博物館の館長が「展示ケースの中で、球体が自ら回転した」と語ったという逸話も、実際には「近くの金鉱山での発破作業による振動が原因だった」と、本人が後に訂正している。

 科学的な視点から見れば、クレルクスドルプの球は、超古代文明の遺物ではない。しかし、30億年という、我々の想像を絶する悠久の時を経て、まるで人工物のような完璧な姿で私たちの前に現れた、地球が生んだ奇跡の芸術品であることに変わりはない。

 オーパーツをめぐる物語は、時に我々に、科学的な真実だけでなく、人々が未知なるものに何を求め、何を信じたいと願うのかという、人間そのものの姿を映し出してくれるのかもしれない。

参考:The Ancient Code、ほか

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