トリノの聖骸布、血痕が語る“真実” ― イエスを襲った「いばらの冠」の恐るべき形状が科学で明らかに

イエス・キリストが磔にされた後、その亡骸を包んだとされる聖なる布「トリノの聖骸布」。そこに浮かび上がる人影と血痕は、長年、科学と信仰の間で激しい論争を巻き起こしてきた。そして今、最新の法医学的分析が、聖骸布に残された血痕から、キリスト教最大の謎の一つ、イエスがかぶせられた「いばらの冠」の、真の形状を明らかにした。それは、我々が想像してきたよりも遥かに残酷で苦痛に満ちたものだったのかもしれない。
王冠か、ヘルメットか―長年の論争に終止符
聖書によれば、ローマ兵たちはイエスを嘲るために、いばらの枝を編んで冠を作り、その頭にかぶせたとされる。しかし、その冠がどのような形をしていたのかについては、中世以来、神学者や科学者たちの間で議論が続いてきた。
一つは、王冠のように頭の周りを囲むだけの、シンプルな「リース型(サークレット)」であるという説。もう一つは、頭部全体をすっぽりと覆う、「ヘルメット(キャップ)型」であったという説だ。ヘルメット型を支持する研究者たちは、聖骸布に見られる50箇所以上の刺し傷を根拠に、「単純な輪では、これほど広範囲の傷はつかない」と主張してきた。
しかし、生物システム分析家のオタンジェロ・グラッソ氏が行った最新の研究は、この長年の論争に、科学的な視点から終止符を打つものだった。
聖骸布の“空白”が語る真実
グラッソ氏は、聖骸布に残された血痕の分布を、幾何学的に詳細に分析した。そして、一つの決定的な「証拠」を発見する。それは、頭頂部に血痕が「存在しない」という事実だった。
血痕は、額、こめかみ、そして後頭部に集中している。もし、冠がヘルメット型で、頭部全体を覆っていたのなら、当然、頭頂部にも刺し傷ができ、血痕が残るはずだ。しかし、聖骸布の頭頂部には、血痕が転移した形跡が全く見られない。
この“空白”こそが、冠がヘルメット型ではなく、頭の周りを囲む「リース型」であったことを強力に示唆しているのだと、グラッソ氏は結論づけた。

内向きの“棘”がもたらす地獄の苦痛
では、リース型の冠で、なぜこれほど多くの傷がついたのか。グラッソ氏は、実験的な再現を通じて、その恐るべきメカニズムを明らかにした。
彼が再現したいばらの冠は、棘が「内向き」に生えるように編まれていた。これをマネキンの頭にかぶせると、棘が頭皮に食い込み、冠はまるで“光輪”のように、頭皮からわずかに浮いた状態で固定されたという。そして、ローマ兵たちがそれを無理やり頭に押し付けた時、棘は頭皮を深く突き刺し、一部は折れて頭蓋骨に達し、想像を絶する苦痛を与えたであろうことが、実験によって示された。
さらに、このリース型であるという結論は、スペインのオビエド大聖堂に保管されている、もう一つの聖遺物「オビエドの聖骸布(スダリウム)」に残された血痕のパターンとも、完全に一致するという。

科学が解き明かす受難の真実
もちろん、トリノの聖骸布そのものが本物であるかどうかは、今もなお議論の的だ。しかし、グラッソ氏の研究は、聖骸布に残された血痕という“物証”を、最新の科学的知見で分析することで、2000年前に起きたとされる受難の、より生々しく、具体的な姿を我々の前に描き出して見せた。
イエスの最後の数時間を刻んだとされる、一枚の古い布。そこに残された血の痕跡は、科学という新たな光を当てられることで、今、これまで誰も知らなかった恐るべき真実を語り始めたのかもしれない。
参考:Daily Mail Online、ほか
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2024.10.02 20:00心霊トリノの聖骸布、血痕が語る“真実” ― イエスを襲った「いばらの冠」の恐るべき形状が科学で明らかにのページです。イエス・キリスト、トリノの聖骸布などの最新ニュースは好奇心を刺激するオカルトニュースメディア、TOCANAで