実は我々は“18世紀”を生きている?人類史300年を消し去った“ファントム時間仮説”の謎

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 人類の歴史は300年間“水増し”されていた!? その昔、時の皇帝が297年間分の人類の歴史を捏造して積み増したという驚きの仮説が話題だ――。

■300年間分の人類の歴史が捏造された!?

 今年が2025年であり、令和7年であることを疑う者はまずいないだろうが、実は今年は1728年であると言い張る者がいれば正気を疑うだろうが、驚くべきことにおよそ300年間の人類の歴史が捏造されたと主張する「ファントム時間仮説(Phantom time hypothesis)」が登場している。

 この理論は1991年にドイツの歴史家ヘリベルト・イリグ氏によって初めて提唱されたもので、西暦614年から911年の間に記録された出来事は西暦1000年が早く到来するために捏造されたのだと主張している。

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ヘリベルト・イリグ氏 画像は「LADbible」より

 イリグ氏によればその“犯人”はローマ教皇のシルウェステル2世(950‐1003)、神聖ローマ皇帝・オットー3世(980‐1002)、東ローマ帝国の皇帝・コンスタンティノス7世(905‐959)が3人組の“時間盗賊”として結託し、西暦614年から911年までの人類の歴史を297年分捏造して加算しのだと説明する。

 これら3人の時の皇帝が、西暦1000年の時点でトップに君臨している栄光を勝ち取るため、3世紀進めることを決定したのだという。イエス・キリストの生誕から1000年目が重要と考えられていたため、その年に彼らが統治者であらねばならなかったというのだ。

 476年の西ローマ帝国の崩壊後の中世ヨーロッパは“暗黒時代”として文化や経済が停滞したという見方があり、歴史的史料も希薄であるともいわれている。

 したがってこの時代に起こったと記録されている出来事の一部は作り話であるという考えには、ある程度の説得力がある。神話上のアーサー王は暗黒時代に生きていたとされているが、彼の存在に関する記録は大部分が歴史上の虚偽であると考えられている。

 そうはいっても日本(古墳時代から平安時代)はもちろん世界のほかの多くの地域ではこの時代の記録がきちんと残されており、暦の3世紀が“水増し”されていたら、多くは気づいたはずだろう。

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画像はUnsplashJoanna Kosinskaより

 またオットー3世が神聖ローマ皇帝であったことを考えると、カール大帝(742-814)による神聖ローマ帝国の建国が作り話であるというのは少々不自然であるように思われるし、西サクソン人のアルフレッド大王(849-899)も存在していなかったことにもなる。

 それに加え、コンスタンティノス7世が道半ばの959年に亡くなったことを考えると、彼がこの取り組みに協力した可能性は低い。その時点で教皇シルウェステル2世は13歳で、教皇になるのは40年先のことであったが、皇帝オットー3世は980年まで生まれておらず2人の接点はない。

 そもそも西暦1000年はキリスト教世界にとって非常に重要な年であり、イエス・キリストの再臨が起こる可能性もあると信じられていたことから、歴史の捏造という謀略に、教会をはじめ多くが騙されるとは思えない。

 結局のところ現在の我々が西暦1700年代に生きている可能性は低く、約3世紀にわたる歴史が捏造であるとする「ファントム時間仮説」は歴史改変SFとしては面白そうだが、歴史学的にはかなり厳しそうである。

参考:「LADbible」ほか

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文=仲田しんじ

場末の酒場の片隅を好む都会の孤独な思索者でフリーライター。
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