火星へ行けば二度と“人間”には戻れない!? 低重力がもたらす骨太・小型の「異形化」と、地球の空気が猛毒に変わる日

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 イーロン・マスクが掲げる「2050年までの火星移住計画」。そんな夢物語のような話が、今や現実のロードマップとして議論されている。だが、その華々しいプレゼン資料には決して書かれない「残酷な真実」がある。

 もし人類が火星に定住し、そこで何世代も生きることになれば、私たちの肉体はもはや「人間」ではなくなるかもしれないのだ。

 ライス大学のスコット・ソロモン教授は、近著『Becoming Martian(火星人になること)』の中で、低重力と強烈な放射線が人体に及ぼす、ホラー映画さながらの変異について警鐘を鳴らしている。

 火星に行けば「体が軽くなってジャンプ力が上がる」なんてものではない。ソロモン教授が語る未来像には、生存すること自体の過酷さが突きつけられているのだ。

「宇宙でのセックス」という未知の壁

 まず、火星移住を語る上で欠かせないのが「生殖」の問題だ。火星で都市を作るということは、そこで子供が生まれ、家族が増えていくことが大前提となる。

 しかし、驚くべきことに、人類はいまだ「宇宙空間での生殖活動」についてほとんど何も知らない。無重力や低重力環境で胎児がどう育つのか、そもそも受精は可能なのか。これまで宇宙でのセックスが公式に確認された例は一度もないのである。

 さらに深刻なのは、出産時のリスクだ。火星の重力は地球の3分の1。長期間滞在すれば、宇宙飛行士の骨密度は劇的に低下する。そうなれば、火星で育った女性の骨盤は脆く、出産という激しい身体的負荷に耐えられない可能性があるのだ。火星への移住は「子孫を残せない」という一点だけで、詰んでしまう可能性すらある。

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画像はUnsplashNASA Hubble Space Telescopeより

小さく、骨太に進化する「新人類」

 もし運良く火星で世代を重ねることができたとしても、そこに現れるのは私たちの知る人間ではない。

 ソロモン教授によれば、火星という限られたリソースしか存在しない環境では、生物は「島ルール(島嶼化)」に従って小型化する可能性が高いという。身体が小さければ、それだけ食料や酸素の消費量が少なくて済むからだ。

 一方で、低重力による骨の脆さを補うために、自然淘汰によって「異常に密度の高い骨」を持つ個体が生き残るようになるかもしれない。

 SFアニメに出てくるようなシュッとした美男美女ではなく、「背が低く、骨が太く、肌の色も放射線対策で変わった異形の民」――。それが、未来の「火星人」の正体なのかもしれない。

二度と地球へは戻れない「免疫の断絶」

 最も悲劇的なのは、火星で生まれ育った人々にとって、故郷であるはずの地球が「死の惑星」に変わってしまうことだ。

 火星の密閉された居住区では、地球のような多様な微生物エコシステムは存在しない。そのため、火星人の免疫システムは極めて脆弱になる。ソロモン教授はこれを、かつてヨーロッパ人がアメリカ大陸に持ち込んだ病原体によって先住民が壊滅的な被害を受けた歴史になぞらえている。

 火星人が地球に降り立った瞬間、私たちにとっては無害な風邪のウィルスですら、彼らにとっては人類滅亡レベルの猛毒になりかねない。一度火星に魂を売れば、二度と地球の土を踏むことはできない……。これはもはや、片道切符の流刑地のような話ではないか。

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それでも星を目指すのか

 火星との通信には、片道最大20分かかる。リアルタイムの電話もSNSも不可能な孤独な世界で、身体も心も、そして生物学的な種としても、人類は地球から切り離されていく。

 一見すると、イーロン・マスクの計画を全否定しているようにも聞こえるソロモン教授だが、彼自身は「それでも火星に行ってみたい」と語る知的好奇心の塊だ。

 科学が解き明かしたのは、火星移住が「素敵な引っ越し」ではなく、人類という種の「不可逆な変異」であるという事実だ。2050年、最初の入植者が火星の赤い土を踏むとき、彼らは自分たちが「最後の人間」になるかもしれないという覚悟を、果たして持っているのだろうか。

 火星で生まれる最初の赤ちゃんが、地球の青い空を見て何を思うのか……その日が来るのを、複雑な心境で見守りたい。

参考:Daily Mail Online、ほか

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