400年間地図に存在した島が突然消えた —— メキシコの幻の島「ベルメハ」に隠された陰謀とは

メキシコ湾の地図を開くと、16世紀から繰り返し同じ場所に記録されてきた島がある。名前は「ベルメハ」——スペイン語で「赤みがかった」を意味する言葉だ。北緯22度33分、西経91度22分。ユカタン半島の北西約200キロの海上に位置するとされ、面積は約80平方キロメートル。小さくはあるが、地図の上では確かに存在していた。
ところが20世紀末から21世紀にかけて、衛星写真と最新の観測技術を持つ調査船がその座標を訪れると、そこには海しかない。島の痕跡すら見当たらない。複数の政府主導および民間の調査隊が現地へ向かったが、全員が「何もない」という結論を持ち帰った。400年以上にわたって描かれ続けた島が、完全に消えているのだ。
石油225億バレルと、国境線の行方
この話が単なる地理的謎に留まらない理由は、石油だ。
もしベルメハ島が実在すれば、メキシコはその周辺海域を自国の排他的経済水域(EEZ)に含めることができる。試算によれば、その面積はメキシコの海洋領土を約15%拡大し、地下には推定225億バレルもの石油が眠っているとされる地域を包含する。アメリカとメキシコが海洋境界線をめぐって協議を続けてきた、まさにその海域だ。
島がなければ、その石油資源はアメリカ側の管轄に近い形になる——という構図が見えてくると、「なぜ島が消えたのか」という疑問に、ある種の政治的な色がつき始める。

そこで浮上したのが「CIA爆破説」だ。1970年代、衛星写真がこの海域を水面として記録し始めた頃から、「アメリカの諜報機関が石油利権を守るために島を物理的に破壊したのではないか」という説が語られるようになった。荒唐無稽に聞こえるが、メキシコ国内では一部の研究者や政治家が真剣に主張し、議会で調査を求める動きも出たほどだ。日本で言えば、「尖閣諸島が突然消えて中国陰謀説が浮上した」くらいの政治的インパクトがあるだろう。
「最初から存在しなかった」説の説得力
ただし、より現実的な説明も存在する。16〜17世紀の地図製作者は、地図を精密に作りすぎることで敵国にナビゲーション情報を与えることを恐れ、意図的に誤った島や岩礁を書き込んだとされる。いわば「著作権保護のための虚偽情報」だ。存在しない地名や島を書いておき、それが他国の地図にコピーされていればスパイ行為の証拠として使えた。
メキシコ地理学会のフリオ・サモラ会長は「16〜17世紀の地図製作国は、敵国に使われないよう意図的に不正確な情報を盛り込んでいた」と述べており、ベルメハはそうした「幽霊島」のひとつである可能性が高いとしている。

世界の海図には、実在しない島が記載された例が他にもある——たとえばオーストラリア近海の「サンディ島」も、衛星データで存在が否定されたが2012年まで地図に残っていた。
自然地理的な観点からは、海面上昇や海底地殻変動によって島が水没した可能性も指摘されている。ハワイや日本周辺でも、過去には陸地だったが現在は海中に沈んでいる地形が確認されているためだ。
結局のところ、ベルメハの真相は「消えた」のか「最初からなかった」のかという二択にも決着がついていない。だが確かなことがある——この島の有無が、石油225億バレルの帰属を左右する。地図の上の謎が、現実の資源争いと交差する点において、ベルメハは単なるオカルト話以上の重みを持っているのかもしれない。
参考:Historic Mysteries、ほか
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2024.10.02 20:00心霊400年間地図に存在した島が突然消えた —— メキシコの幻の島「ベルメハ」に隠された陰謀とはのページです。地図、メキシコ湾、島などの最新ニュースは好奇心を刺激するオカルトニュースメディア、TOCANAで
