一つ目の戦闘民族、顔が胸にある男、香りだけを食べて生きる人々… 古代の探検家たちが本気で信じていた「10の奇妙な異民族」

一つ目の戦闘民族、顔が胸にある男、香りだけを食べて生きる人々… 古代の探検家たちが本気で信じていた「10の奇妙な異民族」の画像1
イメージ画像 Created with AI image generation

 現代の私たちは、スマートフォン一つで地球の裏側の風景や人々の暮らしを知ることができる。しかし、インターネットも写真もない古代や中世において、遠い異国を旅して帰ってきた探検家の土産話は、まさに「世界の真実」そのものだった。 たとえそれが、どんなにぶっ飛んだ内容だったとしても、だ。

 今回は、歴史に名を残す古代の歴史家や探検家たちが「あそこにはこんな奴らが住んでいる!」と大真面目に語り継いできた、10の奇妙すぎる異民族(あるいは亜人種)を紹介しよう。ファンタジーRPGの設定資料集ではない。彼らはこれを「現実」だと信じていたのだ。

1.トログロダイト(穴居人)

 古代ギリシャの歴史家ヘロドトスが記述した、エジプトとエチオピアの国境付近に住む民族。彼らは超高速で走ることができ、文明を嫌って深い洞窟に住み、コウモリのようなキーキーという鳴き声で会話をし、トカゲやヘビだけを食べていたという。

 おそらく、アフリカの先住民の言語や生活様式に対する、当時のギリシャ人の強烈な偏見と誇張が混ざった記録だろう。

2.ブレムミュアエ(無頭人)

一つ目の戦闘民族、顔が胸にある男、香りだけを食べて生きる人々… 古代の探検家たちが本気で信じていた「10の奇妙な異民族」の画像2
Guillaume Le Testu, Le Havre『Cosmographie universelle』(1556年)より。パブリック・ドメイン、hereLink

頭がなく、胸に顔(目と口)がある」という、あまりにも有名な異形の人々。これも初出はヘロドトスだが、その後も世界中の探検家が「あいつらを見た!」と報告している。

 16世紀のイギリスの探検家ウォルター・ローリー卿に至っては、「現在のベネズエラのどこかに頭のないエワイパノマ族が住んでいるのを見た」と主張している。世界中で目撃されているあたり、人間の想像力(あるいは見間違いのパターン)は共通しているのかもしれない。

3.キュノケファロス(犬頭人)

一つ目の戦闘民族、顔が胸にある男、香りだけを食べて生きる人々… 古代の探検家たちが本気で信じていた「10の奇妙な異民族」の画像3
By Hartmann Schedel (1440-1514), – Nuremberg Chronical (Schedel’sche Weltchronik), page XIIr — digital source: Beloit College, Public Domain, Link

 頭がない奴がいれば、犬の頭を持つ奴もいる。古代ギリシャの医師クテシアスからマルコ・ポーロまで、多くの探検家がその存在を信じていた。コロンブスでさえ、アメリカ先住民が彼らのことを知っていると主張したほどだ。

 主にインドや東南アジアに住んでいるとされ、言葉は理解できるが自分たちは吠えることしかできない野蛮な種族として描かれることが多い。しかし、一部の伝承では立派な王国を築いているとも言われている。

4.スキアポデス(一本足)

一つ目の戦闘民族、顔が胸にある男、香りだけを食べて生きる人々… 古代の探検家たちが本気で信じていた「10の奇妙な異民族」の画像4
By Michael Wolgemut / Wilhelm Pleydenwurffhttp://www.beloit.edu/~nurember/book/images/Miscellaneous/, Public Domain, Link

 インドに住むとされる、巨大な一本足を持つ人々。彼らはその一本足で普通の人間が追いつけないほどのスピードで飛び跳ねる。

 そして彼らの最大の特徴は、その巨大な足の「使い方」だ。日差しが強すぎるときは、仰向けに寝転がって巨大な足を天に突き上げ、「日傘」代わりにして涼むというのだ。なんともユーモラスで賢い(?)種族である。

5.アバリモン(後ろ向きの足)

一つ目の戦闘民族、顔が胸にある男、香りだけを食べて生きる人々… 古代の探検家たちが本気で信じていた「10の奇妙な異民族」の画像5
By Hartmann Schedel (1440-1514), – Nuremberg Chronicle (Schedel’sche Weltchronik), page XIIr — digital source: Beloit College, Public Domain, Link

 ローマの作家大プリニウスが記した、インドの隠れ谷に住む誇り高き部族。彼らは二本足だが、足首と膝が「後ろ向き」についている。それにもかかわらず信じられないほどのスピードで走れるという。

 プリニウスによれば、彼らはその谷の特殊な空気を吸って生きているため、他の場所に連れ出すと窒息死してしまうそうだ。「だからローマに連れてきて見せることはできないんだよね」という、完璧な言い訳が用意されている。

6.パノッティ(毛布耳)

一つ目の戦闘民族、顔が胸にある男、香りだけを食べて生きる人々… 古代の探検家たちが本気で信じていた「10の奇妙な異民族」の画像6
By Hartmann Schedel – Nuremberg Chronical (Schedel’sche Weltchronik), page XIIr — digital source; Beloit College, Public Domain, Link

 人間とウサギを掛け合わせたような種族。彼らの耳は足首まで届くほど長く、寒い夜にはその巨大な耳で体をすっぽり包んで毛布代わりにしていたという。

 プリニウスは彼らが黒海のどこかにある「オール・イヤーズ島(すべての耳の島)」に住んでいると主張した。プリニウス先生、絶対に読者をからかっているだろう。

7.アリマスピ(一つ目)

一つ目の戦闘民族、顔が胸にある男、香りだけを食べて生きる人々… 古代の探検家たちが本気で信じていた「10の奇妙な異民族」の画像7
By Hartmann Schedel (1440-1514), – Nuremberg Chronical (Schedel’sche Weltchronik), page XIIr — digital source: Beloit College, Public Domain, Link

 ギリシャ神話のキュクロプスとは別の、東ヨーロッパに住むとされる一つ目の民族。詩人アリステアスが旅人から聞いた話として記録している。

 顔の真ん中に目が一つあること以外は普通の人間だが、非常に好戦的で、隣接する部族と常に戦争をしていたという。

8.マクリュエス

一つ目の戦闘民族、顔が胸にある男、香りだけを食べて生きる人々… 古代の探検家たちが本気で信じていた「10の奇妙な異民族」の画像8
By Hartmann Schedel (1440-1514) – [1], Public Domain, Link

 古代リビアに住む人々。プリニウスによれば、彼らは体の真ん中で縦に真っ二つに分かれており、右半身が男、左半身が女という両性具有の姿をしていたという。

 しかし、ヘロドトスも彼らについて言及しているが、見た目が奇妙だとは一切書いていない。ただ「彼らの女性たちは美徳を証明するために隣の部族の女性と儀式的な戦闘を行う」とだけ記している。古代ローマにおいて「戦争」は男のものだったため、プリニウスは「戦う女=半分男に違いない」と思い込んだのかもしれない。

9.アストミ(口無し)

一つ目の戦闘民族、顔が胸にある男、香りだけを食べて生きる人々… 古代の探検家たちが本気で信じていた「10の奇妙な異民族」の画像9
中央上がアストミ By P. Gasparis Schotti or Kaspar Schott (1608-1666). – P. Gasparis Schotti: Physica curiosa, sive mirabilia naturæ et artis, 1662., Public Domain, Link

 古代ギリシャ・ローマ人にとって、インドはとにかく奇妙な場所だったようだ。ギリシャの歴史家メガステネスは、ガンジス川の河口に「アストミ」という口のない人々が住んでいると記した。

 口がない彼らはどうやって食事をするのか? なんと彼らは、果物や花、根っこなどの「香り(匂い)」を嗅ぐだけで栄養を摂取していたという。霞を食って生きる仙人のようだが、嗅覚が鋭すぎるため、強烈な悪臭を嗅ぐとショック死してしまうという致命的な弱点があったとされる。

10.女人国(Nuren Guo)

 西暦450年頃、中国の僧侶・慧深(えしん)が東方への航海から持ち帰った奇妙な国の話。現在の太平洋の島か、北米大陸のどこかだとされるその国は、美しい顔と「毛むくじゃらの体」を持つ女性だけで構成されていた。

 彼女たちは男を見ると逃げて隠れてしまう。子供が欲しい時は水に浸かって待ち、妊娠するのだという。さらに彼女たちには乳首がなく、首の後ろに生えた特別な毛から「ジュース」が滲み出し、赤ん坊は歩けるようになるまでの100日間、そのジュースを飲んで育つそうだ。ちなみに大人の好物は「刺激の強い漬物」らしい。設定が細かすぎる。

 未踏の地へのロマンと、異文化に対する恐れや偏見が入り交じり、こうした奇妙な「モンスター」たちが歴史書に大真面目に記録されてきた。

 現代の私たちは笑って済ませられるが、当時の人々は夜な夜な焚き火を囲みながら、「海の向こうには顔が胸にある男がいるらしいぞ…」と本気で震えていたのだ。人間の想像力こそが、最も奇妙で恐ろしい「秘境」なのかもしれない。

参考:ODDEE、ほか

TOCANA編集部

TOCANA/トカナ|UFO、UMA、心霊、予言など好奇心を刺激するオカルトニュースメディア
Twitter: @DailyTocana
Instagram: tocanagram
Facebook: tocana.web
YouTube: TOCANAチャンネル

※ 本記事の内容を無断で転載・動画化し、YouTubeやブログなどにアップロードすることを固く禁じます。

人気連載

“包帯だらけで笑いながら走り回るピエロ”を目撃した結果…【うえまつそうの連載:島流し奇譚】

“包帯だらけで笑いながら走り回るピエロ”を目撃した結果…【うえまつそうの連載:島流し奇譚】

現役の体育教師にしてありがながら、ベーシスト、そして怪談師の一面もあわせもつ、う...

2024.10.02 20:00心霊

一つ目の戦闘民族、顔が胸にある男、香りだけを食べて生きる人々… 古代の探検家たちが本気で信じていた「10の奇妙な異民族」のページです。などの最新ニュースは好奇心を刺激するオカルトニュースメディア、TOCANAで