1980年代の米芸能界カルト「エターナル・バリュー」とは? 自称“アークトゥルス星人”の教祖が引き起こした洗脳と詐欺の全貌

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 1980年代のアメリカの芸能界には毎晩パーティーで乱痴気騒ぎをしていたカルト教団があった――。元男性モデルの教祖はアークトゥルス星系から来たエイリアンであると自称し、信者たちに高価なヒーリングストーンを買わせていたのだった。

■米芸能界を席巻したカルト教団

 フレデリック・フォン・マイアーズ(1946-1990)は自分はアークトゥルス星系から来たと主張し、1970年代後半から1990年にかけてアメリカの芸能界で「エターナル・バリュー(Eternal Values)」というカルト教団の教祖として君臨していた驚くべき実話が、米HBOのテレビシリーズ「Bring Me The Beauties: A Model Cult」で放映されて話題だ。

 彼は単なるニューエイジカルトの指導者ではなく、むしろ昔ながらの詐欺師であった。彼が売っていた“ヒーリングストーン”は実は二束三文の石ころであったが、裕福なセレブの信者たちは喜んでお金を出した。マイアーズによればヒーリングストーンには人生を変え、暗黒の悪魔的な力から守る霊的な力が宿っているという。

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画像は「Daily Mail」より

“教祖”の前職はファッションモデルであったマイアーズだが、自身の経歴についても嘘をついていた。英国王室と親交のあるマンハッタンの名門一族の御曹司と自称していたが、実際はブルックリン郊外出身で、クリーニング店を経営する父親の息子であった。

 ドイツ語風のアクセントは完全に偽物で、モデルとしてのキャリアが落ち目になった後、ニューヨークの高齢の未亡人たちに取り入って金をたかっていたという。

 しかし商才に長けていたのは事実のようだ。1980年代にヨガ、瞑想、占星術、スピリチュアルなどのニューエイジ系のブームが急上昇したことに乗じて、「彼はヤッピーとニューエイジの架け橋となった」と元信者の元祖男性スーパーモデル、ホイト・リチャーズ氏はドキュメンタリーの中で語っている。

 リチャーズ氏が初めてマイアーズに出会ったのは16歳の時で、マサチューセッツ州ナンタケット島のビーチでのことだった。マイアーズはすぐにこの10代の少年に東洋の神秘主義を説き、ビーチの砂の上に陰陽のシンボルを描き始めたという。

 マイアーズは若きリチャーズ氏に、モデルの道に進むよう勧めた。モデルの世界へと足を踏み入れたリチャーズ氏は目覚ましい成功を収め、シンディ・クロフォード、クリスティ・ターリントン、ナオミ・キャンベルといったスターたちと共演した後、「初の男性スーパーモデル」と呼ばれるようになった。

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ホイト・リチャーズ氏(2009年) By Romina Espinosa, CC BY-SA 3.0, Link

 その一方で彼の収入のほぼすべてはマイアーズの手に渡っており、リチャーズ氏は彼が指定したマンハッタンにある狭いアパートの一室へ、寝に帰るだけの生活を当時送っていたという。

 マイアーズには本物の超能力があるという噂が広まり、彼の信奉者たちは彼が本当に超能力者だと信じていた。マイアーズは基本的に短気な性格だったが、お世辞を言うのがきわめて上手で、その話法は人生に何か欠けていると常日頃感じている自信のない若者たちを取り込むのに驚くほど効果を発揮したという。

 1978年にマイアーズは「エイリアンの侵入」と呼ぶ劇的な変化を経験したと主張し、北の銀河で最も明るい星であるアークトゥルス星系から来た地球外生命体に自分の身体が乗っ取られたと宣言した。

 彼は1999年の世界の終末を人類に警告し、西暦2000年後の新千年紀で人類を導く「誠実な魂」である信奉者たちを集めるために地球に遣わされたと主張したのである。

 伝えられるところによると、1980年代半ばまでに彼は100人近い信奉者からなるカルト集団「エターナル・バリュー」を育成していた。

 そして1985年、超常現象に関する当時のベストセラー書籍『Aliens Among Us』にエターナル・バリューが大きく取り上げられたことで、マイアーズは突如として世界的な注目を浴びることになった。ハリウッドスターのシルベスター・スタローンでさえ「人生鑑定」を受けに彼のもとに来たと伝えられている。

 エターナル・バリューは、ヒーリングストーンやオーディオテープ教材(宇宙人、暗黒の力、宝石と水晶などのタイトルがつけられていた)の売上急増と人生鑑定で大金を稼ぎ、総額は現在の価値で約900万ドル(約14億円)に達したという。

 当初は禁欲主義的な教義であったエターナル・バリューだったが、この時期にマイアーズは禁欲主義を完全に撤回し、信者たちに自由であることを示すためにできるだけ多くセックスをするよう促した。ただしセックスの相手はグループのメンバーに限るという条件付きだった。

 そしてマンハッタンの悪名高く有名人が集まるナイトクラブ「スタジオ54」でほぼ毎晩パーティーを開き、トップモデルや裕福な社交界の人々といった美しい人々がひしめき合う、夜通しの乱痴気騒ぎが繰り広げられていったのだ。そしてこの時期にマイアーズは薬物中毒の罠に陥ることになる。

 マイアーズの薬物中毒による行動が時を追うごとに強迫的になったことで、教団を離脱するメンバーもあらわれはじめた。そして信者の1人、モデルのジャッキー・アダムス氏が最終的に内部告発を行い、ニューヨークの検察官に対しマイアーズがヒーリングストーン販売で信者たちを騙していたと証言した。

 彼女はまた1990年に『Vanity Fair』誌のインタビューにも応じ、その記事によってエターナル・バリューが抑圧的なカルト集団であり、その指導者が完全な詐欺師であったことは疑いの余地がなくなった。

 そしてマイアーズはその雑誌の発売の5日前にエイズで亡くなった。享年44。

 少数の中核メンバーはそれでも1999年の世界の終末に備えていたということだが、何も起こらなかったことでエターナル・バリューは自然消滅することになる。一過性のことであったとはいえ、カリスマ的な支持を獲得していたマイアーズの短い人生が“疾風怒濤”であったことは間違いないのだろう。

参考:「Daily Mail」ほか

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文=仲田しんじ

場末の酒場の片隅を好む都会の孤独な思索者でフリーライター。
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ツイッター @nakata66shinji

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