28歳のカレンはなぜ怪死した? ― 原子力関連企業を内部告発した女性の「最期の7日間」
原子力委員会(AEC)への社の不正報告が筒抜け状態?
1974年夏、カレンはシマロン・プルトニウム製造工場が労働者の健康と安全規制における重大な違反を犯していると「原子力委員会(the Atomic Energy Commission)」に証言した。ここにはほかに、工場が生産効率をあげようと労働者の訓練を軽んじていること、燃料棒の扱い方が不適切なために不具合が生じて、プルトニウムが漏洩していること、さらに相当量のプルトニウムが行方しれずになっている証拠などが含まれていた。
加えて彼女は、カー・マギー社がMOX燃料の規格検査をパスさせるために、欠陥製品のネガを修整していた事実をスッパ抜いた。すると間もなく、カレンの身辺に奇妙なことが相次いで起こりはじめた。彼女は知らなかったのだ。AECに報告した社の不正は、そっくりそのまま社に筒抜けになっていたことを。
さて、このあたりで、この事件をM・ニコルズが1983年に映画化した、メリル・ストリープ主演の『Silkwood』の予告編をご覧いただこう。当時のなんともずさんな工場内の作業風景が、悲しいほどリアルで、思わず背筋に冷たいものが…。
謎の三日間 なぜ、カレンは急速に蝕まれたのか?
死の直前の1週間に、彼女はまるで説明のつかない重度のプルトニウム被爆を2回も体験した。
まず、1974年11月5日のルーティン検査で、カレンは、自分が法的基準値の400倍を超えるプルトニウム被曝を起こしていることに気がついた。工場で除染を受けた後、自己診断テスト用の尿と大便の収集キットを手渡されて、自宅に戻されたが、翌6日、出社した彼女に奇妙な事件が持ち上がった。前日と当日、全く危険物を扱っていないにもかかわらず、再び、陽性反応が出たのだ。
7日、ルーティン検査は、「カレンの体の汚染がきわめて深刻な状態にあり、吐く息ですら周囲に危険をもたらす」と告げた。急遽、放射線医学チームが彼女の自宅に駆けつけ、屋内の数カ所、特に浴室と冷蔵庫にプルトニウムの痕跡を発見した。この建物は後に解体されている。カレンと彼女の同居人たちは直ちに検査のため、ニューメキシコ州のロス・アラモス国立研究所(Los Alamos National Laboratory)に搬送された。
・自宅にプルトニウムが塗られていたのか?
なぜ、この3日間で、カレンの体は急速に汚染されてしまったのだろうか? 彼女は、与えられたテスト用の採取ビンに、前もってプルトニウムが混入されていたのではないかと主張した。浴室の汚染は、カレンが7日朝、尿サンプルをこぼした際に発生したように思われた。この疑惑は、自宅で採取したサンプルが異常に高い汚染レベルを示したにもかかわらず、工場とロス・アラモスで採取したものが、それをはるかに下回った事実と符合する。
カレンの死はすぐそこまできていた
カレンは考えた。「工場の実情を内部告発したために、カー・マギー社が故意に自分にプルトニウムを仕掛けたのではなかったか」と。だが、同社は後に裁判を起こし、これをカレンの自作自演の狂言であると主張した。つまり、カレンは社の過失に見せかけようと、わざと自分をプルトニウムで汚したというのだ。事実、工場のセキュリティーは極めてずさんで、労働者は望みさえすればだれでも、プルトニウムを簡単に外に持ち出すことができた。しかし、彼女のアパートの放射線レベルは高かったものの、彼女の車からも作業ロッカーからもそれは検出されなかった。
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