サイババとの接近遭遇 ― 私が実際に見たサイババ

■サイババの本拠地・バンガロールへ

 サイババの本拠地は、現在はIT産業で有名な南インドのバンガロール郊外、プッタパルティ村にあった。ここは彼の生誕地でもある。村といっても、世界中から信者たちが“聖地巡礼”に訪れるおかげで、ちょっとした宗教城下町の規模へと変容していた。

 赤茶けた荒野の中に、サイババのアーシュラム(修行場)や病院などがデンとそびえている。私が泊まったのは、アーシュラムの端っこにある外国人用の共同宿舎だ。滞在中はパジャマクルタと呼ばれる、ゆったりとした白い上下を着て、しばしばインド人のように裸足で歩き回った。日本では真冬だったが、赤道に近い南インドは常夏だ。日差しの下で味わう100%のマンゴージュースは格別だった。

サイババとの接近遭遇 ― 私が実際に見たサイババの画像2時は画面左列がインド人用宿舎で、右列の一部が外国人用。日付に注目


 インドは不衛生なことで悪名高いが、少なくともアーシュラムの中では蛇口からキレイな水がほとばしった。また、外国人用宿舎にある共用の水洗式トイレと水シャワーも清潔に保たれていた(ただし、ここ以外が清潔かどうかは知らないので保証できない)。

 食事は施設内にある外国人向けの食堂でとった。メニューはインド風のベジタリアン料理で、とにかくおいしい。豆と野菜を煮込んだものが主体だが、肉と魚を一切使わずにどう調理したらこれだけ食べ応えのある料理になるのか、今もって不思議なくらいだ。しかも、健康に配慮してか、塩もスパイスも抑えてある。甘いお菓子もふんだんに用意されていた。しかも、(インド人からするとそうではないのかもしれないが)格安ときていた。

 滞在中、信者としての一日のスケジュールは「宗教的な儀式への参加」がメインとなる。それが行われるのが、アーシュラムの中心部にあるマンディール(神殿)と呼ばれる巨大ホールだ。屋根からは豪奢なシャンデリアがぶら下がり、床には大理石のタイルが敷き詰められている。何千人もが一同に会することができるほど広い。ただし、男女の席は別けられている。ここでバジャン(神への賛歌)が、午前と午後にはダルシャン(サイババが人々を祝福する儀式)が行われる。ただ、それに参加するか否かは個人の自由である。

 施設には運営に関わるセバダルと呼ばれる奉仕の仕事をする人たちがいるが、一般の信者には仕事もなく、義務もなく、寄付の強要もない。つまり、アーシュラム(修行場)といったところで、日本の禅堂とは真逆で、何かを強制されることは一切ない。だから、スケジュールといっても、あって無きがごとしで、すべては本人次第である。

 ただし、禁止事項はあり「飲酒・喫煙の類い、騒ぐ、政治的な主張をする」といった行為は許されない。男女同席も好ましく思われないようだ。また、私が宿舎から勝手に近くの丘に登ろうとしたら、「日本の友達よ、ゴブラが出るからやめなさい」と、穏やかな調子で注意された。それ以外では、いつ起きようが、食べようが、施設の外に出ようが、儀式に参加しようがしまいが、完全に自由なのだ。


■夢に現れるサイババ

サイババとの接近遭遇 ― 私が実際に見たサイババの画像3画像は、サイババ「Wikipedia」より

 こうして、私はとくに信者というほどでもなかったが、バジャンでは周囲に合わせて歌う真似事をし、ダルシャンでは遠くにいるサイババに手を合わせた。

 アーシュラムには世界中から人が集まっていた。私が泊まった外国人用宿舎はさながらミニ国連の様相を呈していた。私の布団の周りには、ドイツ人、アメリカ人、ロシア人、アルゼンチン人、オーストラリア人などがおり、誰とも一瞬で打ち解けた。

 中には、いつ見ても蝋燭を灯して一心不乱にサイババに祈っている若者もいた。たまたま祈る前の彼をみつけて話しかけてみると、ドイツ人の若者だった。彼が話すところによると「高校生の頃、オレンジ色のローブをまとったアフロヘアの男が繰り返し夢の中に現れるようになった」という。といっても、当初は誰か分からなかった。何者かと思って調べ始めて、ようやくそれがサイババなる人物であることを知ったそうだ。

 興味深いことに、私はこれとまったく同じ話を耳にしていた。ただし、私の友人の知人(日本人)のケースである。つまり、サイババが話題になった際に、私の友人が「こんな知り合いがいる」と言って教えてくれたのだ。その人もやはり、それまでにサイババについて見たことも聞いたこともなかったという。結局、熱心な帰依者になったそうだ。

 私はこの宿舎で西暦2000年を迎えた。深夜だったが、何人かの人たちと「ハッピー・ニュー・ミレニアム!」と言いあった。感慨深かった。お互い知らない者同士だが、同じ“信仰”を持つせいか、宿舎の中は一体感に満ちていた。いや、アーシュラム全体が独特の清浄な雰囲気に包まれていた。

 我ながら気恥ずかしい言葉だが、今もってここほど愛と世界平和の存在していた場所を私は知らない。ここでの暮らしは完全に極楽モードだった。中には一年以上も滞在しているというイギリス人がいたが、私もできるものならそうしてみたいと本気で思ったくらいである。

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