「モノ」が放つ想念に導かれて ― フリーメーソン、宜保愛子、わら人形コレクション
【「裏モノコレクター」として生きる男、渡辺亮介氏の生き方に迫るロングインタビュー 第6回/全6回】
「裏モノコレクター」渡辺亮介氏は、3,000万円以上をつぎ込んだ自らの収集をさらに充実させようと、日々活動を続けている。しかし、独身で子供がいない渡辺氏は、自分と自分のコレクションの行く末を少し心配しているのだ。渡辺氏のこれからとは……。
■裏モノコレクター主催の博愛結社「アンダーグラウンド・ティー・クラブ“モーツアルト”」
渡辺氏の裏モノコレクターとしての活動は、グッズの収集や宗教団体などへの潜入に留まらない。
渡辺氏は、2003年から秘密結社のような団体「アンダーグラウンド・ティー・クラブ“モーツアルト”」を発足。自身が「グランドマスター」として代表の座に就いている。“モーツアルト”のメンバーは現在、18歳以上で約60名。入会条件などはさして厳しくなく、住所氏名を登録できる人であれば、どんな職業・主義でも参加可能だという。
これらの活動は、渡辺氏が昔からシンパシーを感じている世界最大の秘密結社「フリーメイソン」を模したものだ。彼のコレクションにもフリーメイソンの経典やライター、バッジ、バックルや帽子などグッズが充実。なお、モーツアルトもフリーメイソンの会員だったということで、彼主催の団体もこの名を掲げていると推察する。
“モーツアルト”の主な活動は、「お茶会」を開くこと。区の公民館などを渡辺氏がおさえ、氏の最近のコレクション、潜入の記録(写真素材)などを披露するというものだ。
また、他に「円卓会議」という活動もある。これは、東京都東大和市の渡辺氏の屋敷で行われる会議で、参加者は最近のテーマとコレクションを披露した後、あるテーマを題材にした話し合いをするというもの。
筆者が以前、円卓会議に参加させてもらった時は、「現代の鬱病とドラッグカルチャー」がテーマだった。その日の出席者は渡辺氏、筆者を入れて5人。30~50代の男性で、みな渡辺氏の知り合いだ。警備員やカウンセラーなど、様々な職業の人が集まっていた。
そんな初対面同士が土曜の昼下がり、それぞれにとって直接は関係ない鬱の話を、真剣に聞いているのは不思議な感覚だったが、みな真面目に渡辺氏の趣向を受け入れているようだった。
■渡辺氏の母は語る
円卓会議では、とても温かい気持ちになる場面があった。
会議が鬱症状の話で盛り上がっている頃、「亮介、よろしい? お茶」という声がして、渡辺氏の母が紅茶とケーキを持ってきてくれたのだ。紅茶は1缶約5,000円の「ティアオペラ」という種類、ケーキは「モロゾフのデンマークチーズケーキ」だという。こだわりのセレクションらしい。
母の登場で、場の雰囲気が一気に柔らかくなった。渡辺氏いわくこの会は「貴族の悪趣味のようなもの」とのことだが、あまりそんな感じはしない。鬱病の話の時に、庭を氏の祖母が横切っていくのが見えたりする。のどかだ。母に氏のことを聞いてみた。
「彼の活動には、理解があるようですが?」
すると、母はしっかりとした口調で答えた。
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