島根県「乙女峠」の聖母マリア出現事件!! 拷問に耐えた隠れキリシタンはそのとき何を聞いたのか?
雪深い冬の津和野で、氷の張った水に投げ込んだり、縛ったまま殴りつけたり、さらには「三尺牢」と呼ばれる身動きすらままならない三尺四方の檻の中に閉じ込め、裸のまま何日も外気に晒すなどの激しい拷問が行われ、耐えかねて棄教する者も現れた。その一方、改宗を拒んで殉教していった者の中には、3歳や4歳といった年端もいかぬ子どもまで含まれていたという。
こうしたキリシタンの中に、安太郎という信徒がいた。親切で優しい人柄の安太郎は、模範的な信者であった。ほかの信者からも尊敬されていたから、津和野藩の役人は、この男が信仰を捨てれば皆が追随すると考え、彼を「三尺牢」に閉じ込め、裸のまま真冬の乙女峠に捨て置いた。
安太郎は明治2年1月10日から、「三尺牢」に閉じ込められたという。戸外で何日も過ごす安太郎の身を案じた仲間たちは、小さな硬貨をナイフのように用いてやっとの思いで床に穴を開け、17日の夜、密かに彼の様子を見に行った。すると、一週間牢に閉じ込められている安太郎は、逆に仲間を勇気づけるようにこう言い放つのだ。
「私は少しも寂しくありません。毎夜、九つ時(深夜0時)から夜明けまで、きれいな聖マリア様のようなご婦人が現れてくださいます。とてもよい話をして慰めてくださるのです」
信徒たちは、この女性は聖母マリアに違いないと信じた。しかし安太郎は、仲間にこの話をした直後の22日、ついに力尽きて天に召された。聖母マリアが安太郎にどのような話をしたのか、具体的な内容は伝わっていないようだ。
現在、島根県津和野町の乙女峠には、聖母マリア出現を記念する聖堂や、「三尺牢」に入った安太郎と聖母の像なども建てられている。しかし世界的に見ると、日本での聖母関連事件としては、秋田に伝わる「涙を流す聖母像」の方が有名らしい。有名な聖母出現地と異なり大規模な施設はないが、乙女峠は津和野駅からそう遠くない、渓流の近くにある。それがかえって、聖母マリアの慈しみを感じさせる風情にもつながっている。山陰の小京都と呼ばれる津和野町内の観光も兼ねて、読者の皆さんもいつか訪ねてみてはいかがだろう。
羽仁礼(はに・れい)
一般社団法人潜在科学研究所主任研究員、ASIOS創設会員
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2024.10.02 20:00心霊島根県「乙女峠」の聖母マリア出現事件!! 拷問に耐えた隠れキリシタンはそのとき何を聞いたのか?のページです。キリスト教、聖母マリア、羽仁礼、奇跡、拷問、島根県、明治、江戸などの最新ニュースは好奇心を刺激するオカルトニュースメディア、TOCANAで