ついに本物の幽霊が写った日本映画が公開される!! 監督「深夜の国道で…」

■映画全体が薄明に浸るような感覚に酔う

ついに本物の幽霊が写った日本映画が公開される!! 監督「深夜の国道で…」の画像5知らない町』より ©Shingo Ohuchi

 『リング』や『呪怨』といった従来のJ(ジャパニーズ)ホラーばかりでなく、これまでの邦画でも、テレビの深夜ドラマからスピンアウトした『トリハダ』など、幽霊や心霊現象などの描写は皆無か控えめで、かといって残酷表現も特にない、人間の狂気や不条理さなどに焦点を当てたリアルなホラー作品はあった。『CURE』『回路』といった黒沢清監督の一連のホラー作品もそれに近い。

 洋画なら、原作を超えた出来映えのスタンリー・キューブリックならではの『シャイニング』、デヴィッド・リンチの『ツイン・ピークス』などがすぐ想い浮かぶ。『ロスト・ハイウェイ』『マルホランド・ドライブ』『インランド・エンパイア』と続くリンチの諸作には特にそうした傾向が強い。「影響を受けた作家は?」との問いにも、大内監督は真っ先に彼の名を挙げた。

 さらに、台湾の蔡明亮なども好きだという。なるほど、引退を発表した蔡の(今のところ)最後の長編となる『郊遊 <ピクニック>』も『知らない町』に通ずる夢幻的な作品だ。家族の崩壊を描くストーリーらしきものは存在するが、まるで明確ではない。主人公はじめ登場人物がひたすら彷徨う場面が続くのだが、そこには恐怖の影が踊っている。まさに幻影だ。

“幽霊の正体見たり枯れ尾花”という句もある。幽霊だと思って見ていた物がよく見てみれば、ただの枯れすすきの穂―などという体験は読者もしょっちゅうしているはずだ。それが「見えるか見えないか」はまさに観客次第なのだ。偏見や先入観こそ怖い。

『知らない町』の問題のシーンの箇所をここで詳らかにするのはよしとしよう。まさに疑心暗鬼となってスクリーンに対峙していた筆者自身、件の橋のシーンの人影はかえってわからず、全編を通じてほの暗い作品総体からひたひたと迫る、「見えない恐怖」に酔うような感覚に溺れていた。
(取材・文=鈴木隆祐)

6/11(土)~7/1(金)まで渋谷シアター・イメージフォーラムにてレイトショー公開!
■『知らない町』公式サイト http://unknowntown.com/
■『知らない町』facebook https://www.facebook.com/unknowntown

動画は、『知らない町』より

 

ついに本物の幽霊が写った日本映画が公開される!! 監督「深夜の国道で…」の画像6大内伸悟監督

■大内伸悟
2005年、多摩美術大学映像演劇学科卒業。卒業制作で監督した『人はいない』がイメージフォーラムフェスティバル2005で入選後、ロッテルダム国際映画祭2006に正式招待される。2006年に『パーク』を監督。イメージフォーラムシネマテークにて上映。その後、商業映画に助監督として数本参加。製作に4年を要した7年ぶりの新作である本作が今年やっと公開に漕ぎ着けた。

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