■夜には夜の、都市の顔がある
――最後に、清掃作業中や撮影中に、何か不思議な体験をしたことはありますか?
木原 「都市の音」っていうのがあるんですよ。
――都市の音、ですか?
木原 寒い冬の夜、六本木の高層ビルの屋上で作業していた時に聴いたんです。東京の高い所に上ると、ある方向には高層ビルがたくさん建っていて赤いランプが凄いんですよ。その時はパトカーのサイレンみたいで嫌だなって思っていて、で、明け方に朝が動き始めるような、「ゴー」っていう吸い込まれるような音を聴いた時は感動しました。風の音でも車の音でもない、街全体からとしか言えないような音。徹夜作業でちょっとハイになっているのもあったのかもしれないですけれど。
――都市という巨大な生き物が目覚めた時の音ですか。面白いですね。昼中心の生活をしている人が聴くことはできない。
木原 夜勤は面白いですよ。辞めた時には、日中に働くほうが体にいいな、って思うけど、戻ったら戻ったで夜は静かでいい。人が寝静まった時間に働くのは、慣れれば本当にいいです。ゴミ収集車のオッチャンとかしかいない。夜には夜の顔がある。別世界ですよ。夜を昼として生きていると。
(文・渡邊浩行/YAVAI-NIPPON)
■作家プロフィール
木原悠介(きはら ゆうすけ)
1977年広島県生まれ。2014年、Studio 35 Minutesにて初個展『Dust Focus』を開催。2016年、POETIC SCAPEにて写真展『DUST FOCUS』を開催。SUPER BOOKSより写真集『『DUST FOCUS』を発表。
■写真集info
『DUST FOCUS』
デザイン:鈴木聖
仕様:257mm×364mm/24ページ
定価:2,700円
発行:SUPER BOOKS
・http://superbooks.jp/dustfocus/
■写真展info
木原悠介展『DUST FOCUS』
会場:POETIC SCAPE
東京都目黒区中目黒4-4-10 1F
会期:2016年6月29日~8月6日
開場:水曜 16:00-22:00 木曜〜土曜 13:00-19:00
休廊日:日曜、祝日(月曜、火曜はアポイント制)
・http://www.poetic-scape.com/
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