なんという思いやり! ザトウクジラがシャチの攻撃からアザラシを救出
――科学分野だけではなく、オカルト・不思議分野にも造詣が深い理学博士X氏が、世の中の仰天最新生物ニュースに答えるシリーズ
利他的行動は人間をはじめとして多くの動物で見られるが、そのような行動が種を越えることはやはり珍しい。だが、ザトウクジラにとってはそうでもないらしい。『Mysterious Universe』によると、彼らはシャチの群れに襲われたアザラシを身を挺して助けているというのだ。
アメリカ海洋大気庁の海洋学者ロバート・ピットマン氏は、2009年の南極での調査中、ザトウクジラがシャチの群れに襲われたウェッデルアザラシを救助する光景を目撃した。
シャチの群れは流氷の上にいたアザラシを襲い、一頭を海に落とした。シャチは英語のKiller whale(殺し屋クジラ)、学名のOrcinus orca(『冥界からの魔物』という意味)という呼び名にふさわしい、まさに海の狩人だ。シャチは群れで獲物を追い詰め、海に沈めて窒息死させる。だが、危機一髪のアザラシの元へ、ザトウクジラたちが近づいてきた。ザトウクジラはくるりと回転して背泳ぎのような格好になり、二つの胸びれの間にそのアザラシ(推定180kg)を乗せた。波に洗われて海に落ちそうなアザラシを、ザトウクジラはひれで優しく支えたという。やがてシャチは獲物を諦めて去って行った。

この驚くべき光景を目撃したピットマン氏は海洋科学者たちに情報を求めた。彼の元へは31件もの同様の事例が寄せられた。シャチの魔の手から助けられた動物の中にはザトウクジラの幼獣もいたが、判別できた事例のほとんどはアザラシだったという。
この感動的な行動は、ザトウクジラがもつ種を越えた思いやりなのだろうか。ワシントン大学の水産科学者トレバー・ブランチ氏は、ザトウクジラがシャチの攻撃を邪魔するのは本能的なもので、我々に関わるなといっているようなものなのかもしれないという。一般に、利他的な行動というのは見返りを期待して行われると考えられるが、ザトウクジラが得る恩恵はまだよく分かっていない。助けられた動物たちがザトウクジラを助けることはないのだ。
生物学に詳しい理学博士X氏にも尋ねてみたが、同様の見解だった。
「ザトウクジラにしてみれば、アザラシへの思いやりというよりは、同じ海域に暮らすシャチへの示威行為かもしれません。嫌がらせという可能性もあります」
シャチの獲物は魚、海鳥、アザラシ、イルカ、ホッキョクグマなど多岐に渡り、時にはクジラの幼獣もターゲットとなる。ザトウクジラにしてみればシャチの存在は子供を脅かす脅威であるし、成獣でもシャチの群れに勝つことは難しいという。
「動物が時折見せる優しさや思いやりを賢さの証明とすることは多いです。でも、本当に知能が高いなら、思いやりとは反対の、直接的な暴力を用いない狡猾な嫌がらせもあるんじゃないかと思います。クジラやシャチが本当に高い知能を持つというなら、そういう戦いをしていても不思議ではないと思いませんか? それこそ、私たちがやっているように」
X氏はこう語るが、果たしてザトウクジラの行動の真の目的は何なのだろうか。弱い生物への思いやりなのか、それとも敵への嫌がらせなのか。研究はまだ始まったばかりである。
(吉井いつき)
参考:「Mysterious Universe」、「Natural History」、ほか
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