“失踪を繰り返す父”と“行方不明だった伯母”を撮り続けた写真家・金川晋吾作品集『father』インタビュー

• 
• Xでポスト
• 

写真集『father』／金川晋吾

■パチンコの轟音の中で自分を消していた父

――家を空けていた間、お父さんは何をしてたんでしょう?

金川　主にパチンコです。パチンコは何も考えないで済むからだと思うんですよ。轟音の中で何も考えない。

――パチンコ屋にずっといると時間の感覚が麻痺しますよね。

金川　あれはやばいです。ヴィム・ヴェンダースが『東京画』でパチンコのことを言ってたけど、父にも当てはまると思いました。

――どんな顔で帰ってくるんですか?

金川　しんどそうな顔で帰ってきます。それはけっこう嫌でしたね。でも、帰ってきてしばらくすると、一緒にテレビを観ているときにサッカーの解説を始めたり、ずっと落ち込んでいるというわけでは全然なかったですね。中学、高校生ぐらいの僕にはそれがちょっと鬱陶しくもありました。口も利きたくないほど仲が悪くなることはなかったですけどね。父も僕とどう接したらいいかわからなくなっていたんだと思います。

――一家の大黒柱の失踪って家族の一大事ですよね。

金川　経済的な危機感だけですよ。父が一家の大黒柱っていう感覚はそんなになかったかな。それと、姿を消したくなる父の気持ちがどこかでわかると思っていたんですね。家のローンもあるし子供も養わないといけない。だから、父に対して「なんてことをするんだ」とは思っていなかった。そんなには思っていなかった。母が父のことを悪く言わなかったということも大きく影響しているのだと思います。

 
• 前のページ
 
• 1
 
• 2
 
• 3
 
• 4
 
• 5
 
• 6
 
• 7
 
• 8
 
• 9

関連記事

• 

  バッキバキに剥き出しの“東京”を撮る写真家・新納翔！ 圧倒的な都市の“核”を捉えた写真集『PEELING CITY』を語る！

• 

  今一番ヤバい街「川崎」を撮った写真家・細倉真弓に訊く！ 不良、貧困、ヘイトデモ… その裏側にある“地獄のイデア”とは？

• 

  【写真展】ブローニュの森の娼婦、少数民族ロマ、ピカピカの都市…フランスの違和感を捉えた石川竜一最新作『OUTREMER/群青』が強烈すぎる！

• 

  愛知県・移民流入地の激ヤバ写真集『Familia 保見団地』ー 難民、人種、外国人…これはオリンピック後の日本の姿（名越啓介インタビュー）