“失踪を繰り返す父”と“行方不明だった伯母”を撮り続けた写真家・金川晋吾作品集『father』インタビュー

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■他人の「語りきれなさ」への関心

――『father』の中ではお父さんの失踪の理由について「呼び名に困る何か」と書かれていましたが、「呼び名に困る何か」って何だと思いますか?

金川 わかりません。答えを出そうとすることには本当には興味がないんだと思います。人は変化するし、ある人について語ることには「語りきれなさ」というのが常につきまといますが、むしろそっちに興味があるというか。



――「家族の重さ」と「借金」は、失踪の理由としてわかりやすい。でも、それだけじゃない。それが「呼び名に困る何か」っていう言葉に繋がっているのかと思いました。

金川 僕自身がその答えを出すことを全然目的としていないんですよ。他者を理解したいのじゃなく、理解することの難しさ、他者を把握しようとしてもどうしても横滑りせざるをえないことに関心があるんです。父がなぜ失踪したかは語ろうと思えば語れるんですよ。だけど、そこからどうしてもはみ出すものが出てきてしまいますよね。



■撮影することでより親子らしい関係になれた

――お父さんはすごく写真的な人ですよね。金川さんが関心があるという、言葉ですくいきれない「はみ出した何か」を豊かに持っています。そして、それを表現できることが写真の最大の強みだと思います。

金川 そうなんです。父はいろんな意味で写真的なんですよ。受動的であることとかその一瞬、一点でしか生きていないところも写真的です。以前、哲学者の千葉雅也さんと対談した時もそんな話になりました。そこの面白さなんです。


――だからこそ、金川さんは写真家としてお父さんをただ見続けている。なぜ失踪を繰り返したのか、その答えはある意味どうでもいい。

金川 撮影を通してそこに至ったんです。答えを出そうとしながらその「答えの出なさ」を面白がっていたんですね。


――「失踪する父親に翻弄される息子」から「写真家という観察者」に立ち位置が変わっていった。

金川 そう。観察者になったことでより親子らしい関係に入れた。結果的に父から与えられる立場になりました。

※後編は「消息不明から見つかった伯母を撮る」を掲載予定です。

※開催中の個展『長い間』は2月25日まで。加えて、昨年NHKで放映され好評だった金川さんのドキュメンタリー『父には蒸発癖があった 写真家 金川晋吾 父を撮る』がアンコール放送される。2月21日と2月28日(再放送)の『ハートネットTV』だ。個展と合わせてぜひ、見てみてください。


■作者プロフィール
金川晋吾(かながわ・しんご)
1981年、京都府生まれ。神戸大学発達科学部人間発達科学科卒業。東京藝術大学大学院美術研究科先端芸術表現専攻博士課程終了。第12回三木淳賞受賞。第42回木村伊兵衛写真賞候補。
http://kanagawashingo.com/index.html

■晶文社Web連載「撮影ノート 写真のあいだ」
http://s-scrap.com/category/kanagawashingo

■写真集info
『father』
仕様:B5版 172ページ 並製
価格:2,700円+税
発行元:青幻舎
http://www.seigensha.com/sp/father/

■写真展info
あざみ野フォトアニュアル 金川晋吾 長い間
開催期間:2018年1月27日〜2月25日
会場:横浜市民ギャラリーあざみ野
開場時間:10:00~18:00
閉館日:年中無休
料金:入場無料
https://artazamino.jp/event/azamino-photo-2018/

対談1:「金川晋吾×滝口悠生」
日時:2月24日(土曜日) 15:00〜17:00
※参加費無料。事前申し込みが必要(先着順)。
https://artazamino.jp/event/azamino-photo-2018/

失踪を繰り返す父と行方不明だった伯母を撮り続けた写真家・金川晋吾作品集『father』インタビューの画像12

写真集『father』/金川晋吾

文=渡邊浩行/YAVAI-NIPPON、構成=編集部

※ 本記事の内容を無断で転載・動画化し、YouTubeやブログなどにアップロードすることを固く禁じます。

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