「大麻解禁を阻むのは日本の馬鹿な“ウヨ豚”たち」 ― 宮台真司✕高樹沙耶✕石丸元章、平成最後の「超大麻論3」

■大麻問題は、原発の絶対安全神話と同じくデタラメ

宮台 日本は「混ざり合い」も「棲み分け」もダメ。経済界に言われて、「外国人労働者をどんどん入れる」と言いつつ、ウヨ豚に配慮して、長期滞在できる技能労働者であれ移民つまり国民として受け容れない。そんな「世界に唯一の御都合主義国」だから、生き方も選べず、真実も通らない。個人を尊重しないことが大麻を阻む最大要因です。

高樹 逮捕されたとき、いちばんがっかりしたのは……事情聴取で検事さんに「あなた方を逮捕することによって、大麻のことを勉強することができました」と言われたことです。よく知らないのに、事情聴取をしているという。卒倒しそうになりました(笑)。

宮台 医療用解禁を訴えて国政選挙に出馬した高樹沙耶さんを逮捕したことで、彼らは本当に勉強したんだと思う。だから少しは意味のあったんです。今この段階で知り合いの誰かが大麻取締法で逮捕されたら、僕は法律の時代錯誤を訴えて擁護します。あんたらも少しは勉強したんだったら、もう少しマトモな理屈を言えやと。繰り返すと、世界保健機構や各大学が大麻は酒や煙草よりも害がないことを実証しました。有害だと言うなら、権威ある科学雑誌に実証論文を投稿すればいい。それもできないくせに、国外に聞こえないように、国内に向けてだけ「有害だ、有害だ」とほざくのは、卑怯者のクズです(笑)。

石丸 大麻は有害ではなく、依存性も薄い。このことは明らかになっているのにもかかわらず、厚労省は相変わらず、大麻は脳細胞を破壊する危険な薬物で依存性も高いと、反大麻プロパガンダを繰り返しています。彼ら個人は、心の中で何を考えているんでしょう。どういうつもりなんでしょうか? 個人としてはわかっているはずなのに……。

宮台 原発の、絶対安全神話・全量再処理神話・最低コスト神話と同じです。国際的には通用しないデタラメだけど、日本国内では、ステイタスやポジションを守りたい連中が、内集団(所属組織)だけを見て、「損得ベースの忖度」で、大法螺を吹く。まさに「正しさよりも損得」。僕の定義では、「クズ」とは「正しさよりも損得」の連中です。

石丸 高樹さんが逮捕されたとき、厚労省は「医療用大麻なんて存在しない」と発言していた。存在しないものが、今年もイギリスなどで解禁されている。いまとなっても発言を否定していないんですよね。

高樹 警視庁のプロパガンダもひどいんです。HPに京都の府立病院の先生のインタビューを載せているんですが、「平成26年以降、大麻依存症で入院する患者が約20倍に増えた」「入院している薬物依存症患者の15〜16%くらいが大麻依存症」と。でも、日本臨床カンナビノイド学会代表理事の正高佑志医師が現地を訪れて調べてみたら……そのときの大麻依存症の入院患者はゼロ、年間でも13人程度だったという。

石丸 大麻取り締まりに関しては、まやかしがまかり通っているんですよね。そういえば―― 先日、高樹さんも出演していたテレビドラマ『相棒』に覚醒剤中毒の“シャブ山シャブ子”というキャラクターが登場して、「現実とはかけはなれている、薬物依存者蔑視だ」と物議を醸しました。これについても、高樹さんはTwitterで「ドラマや映画はあくまでフィクションなので誇張を悪として俳優や製作者を責めるのもどうかと思いますが、情報番組や“ダメ絶対だめキャンペーン”での大麻についての報道は、病に苦しみ大麻の真実を知った人からしたら大罪だ」とコメントしました。とうぜんながら、大炎上(笑)。宮台さんはこのことについて、どう思われますか?

「大麻解禁を阻むのは日本の馬鹿なウヨ豚たち」 ― 宮台真司✕高樹沙耶✕石丸元章、平成最後の「超大麻論3」の画像4怪奇大作戦』(東映ビデオ)

宮台 「何が正しいか」を自分で見極めない、右顧左眄して周りに合わせる「日本的ヘタレ」による醜悪な「祭り」なので、論じるに値しない。面白いのは歴史が繰り返すことです。1968年に始まった特撮ドラマ『怪奇大作戦』第24話「狂鬼人間」が放送中止になったのも、統合失調症者のカリカチャーがデタラメすぎたからでした。

高樹 そんなものがあるんですね。

宮台 「狂鬼人間」とは統合失調症患者のこと。患者の描き方がデタラメだとTBS局内で問題になり、差別問題になることを予想して放映を中止した。僕は観たことがあるけど、白目を剥いて「ひーっひっひ」と叫んだりと、今となってはギャグとしか思えないひどい表現ですが、それまでの社会通念がそんなものだったということです。

石丸 はい。

宮台 シャブ山シャブ子というキャラクターも同じで、「ヤク中とはこういうものだ」という社会通念に媚びて描いたのでしょうが、十年後には確実にギャグになります。

石丸 放送直後から、早くもギャグ化してるようです。

宮台 テレビ局スタッフの劣化も著しいから、「狂鬼人間問題」についても知識がないんでしょう。という次第で、「馬鹿は同じことを永久に繰り返す」が世の摂理です。

石丸 「馬鹿は同じことを永久に繰り返す」! ははは と、一応笑いますけども、一部、反省いたします。

高樹 昨年2月、 NHKの『クローズアップ現代』で大麻汚染が取り上げられ、夜回り先生こと教育評論家の水谷修さんが出演していたんです。それで、「大麻は人間を3回殺す。頭の死・心の死・体の死」と書かれたフリップを掲げて、真面目な顔をしてカメラ目線で語りかけていた――まだ2年も経っていませんが、あれなんか、いまとなっては、完全にギャグですよね(笑)。というか天下のNHKが世界の現実を無視した報道にかなり失望しました。

宮台「夜回り先生」を自称する水谷修といえば、「若者のことを分かった気で、上から目線で道徳を垂れる勘違い男」の典型ね。僕が新聞やテレビで援助交際の存在を世に告知したときもそうでした。まさに「同じことを永久に繰り返す何とやら」です(笑)。

石丸 夜中に街を徘徊して若者に声かけて説教するって、夜回り先生の害毒はドラッグなみ。夢に出ますよ、こわいわ~。

宮台 日本の大麻解禁は2020年がきっかけになるかもしれない。新東京五輪で国際標準への関心が高まり、おのずと「恥ずかしいガラパゴス国家・日本」がクローズアップされます。アベノミクスの出口戦略もなく、トランプのケツを舐める以外の外交戦略もなく、憲法改正も線香花火で終わる。安倍政権はレームダック化し、ウヨ豚も沈む。

石丸 そういえば、宮台先生は12月16日に新宿・ロフトプラスワンのトークイベント「語り尽くす、医療大麻の世界」イベントはコチラ)に出演されるんですよね。

宮台 『DAYS JAPAN』副編集長ジョー横溝氏と薬剤師・臨床検査技師の林真一郎先生と、今日の話を含めて今後を展望します。新五輪できっかけを得ても日本での解禁は世界で最後になるでしょう。それでも日本で医療用がどのように解禁されていくのかは見物(みもの)です。医療用が解禁されたら事実上「何でもあり」ですから。

高樹 私も近くにいたら、駆けつけたいんですけれど……。

石丸 凄いなあ。その場にいたくない(笑)!

高樹 う~ん。むずかしいと思いますが……行けなくても、すごく楽しみです。

石丸 宮台先生ありがとうござました。また是非いらしてください。

高樹 ありがとうございました。

ということで、シリーズ「高樹沙耶大麻をめぐる対話10番勝負」―― 第1回目、首都大学東京教授で社会学者の宮台真司さんをおむかえして、お送りしました。各界のさまざまな有識者と対話をすることで、われわれは「大麻」に対する理解を深めていくことができるのか? 正直な話、夜回り先生こと水谷修先生にも、ぜひいらしてほしい! また次号。

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※これまでの連載はコチラ

◎石丸元章(いしまる・げんしょう)
1965年8月9日、千葉県生まれ。作家、ライター。高校在学中にライターデビュー、人面犬ブームの仕掛け人。著書に『スピード』『アフター・スピード 留置場→拘置所→裁判所』『平壌ハイ』『神風』(すべて、文春文庫)など多数。近作に『霊園にて- bpm198』(東京キララ社「ヴァイナル文學選書 第一弾」)
・@chemical999

◎高樹沙耶(たかぎ・さや)
1963年8月21日、静岡県生まれ。元女優、元作詞家、石垣島のキャンピングロッジ 「虹の豆」オーナー。1983年に主演映画『沙耶のいる透視図』で女優デビュー、映画&ドラマシリーズ『相棒』ほか、数多くの作品に出演、人気を呼ぶ。著書に『贅沢な暮らし—衣食住が育む「心のラグジュアリー」』(エクスナレッジ)、『ホーリープラント 聖なる暮らし』(明窓出版)ほか
https://www.facebook.com/nijinomame/

◎宮台 真司(みやだい・しんじ)
首都大学東京教授。社会学博士。東大助手(現・助教)や東京外国語大学専任講師を経て07年より現職。著書に『14歳からの社会学』(世界文化社)、『正義から享楽へ』(垣内出版)など。

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