「同性婚訴訟」の誤った論点 ― 日本の結婚制度がそもそもクソすぎることに気づけ (東大教授寄稿)

 とまあ、結婚はつくづくリスクというか、さぞかし世の不幸の主原因というか。皆さんよくもあんな〈国家の圧迫〉に進んで身を任せる気になるもんです、感心しますよ。

 さてそれじゃ、結婚の意味って結局何なんでしょう? パートナーとの性愛関係からすると、現代日本の「結婚」なるものにメリットは一つもありません。結婚が利益を生み出すのは、ただ一つ、そう、子ども関連の事柄なんですね。

 パートナーが単なる恋人や友人ではなく「子どもの母親」「子どもの父親」でもある場合は、いろんな法律的義務も我慢できるでしょう。喜ばしいものですらありうるでしょう。配偶者がもはや愛する対象ではなくなっても、貞操義務を守ることで家庭の安定を保ち、子どもの利益を確保できるでしょう。

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画像は「getty images」より引用

 要するに「子どもがいなきゃ結婚なんて無意味」ってことですよ。あ、「子どものいない人生は無意味」じゃないので誤解なさらぬよう。あくまで〈制度に縛られることの意味〉について話をしてますから。なぜ結婚制度があそこまで〈家庭の安定〉を強要するのか?←子どもの生活抜きでは理解不能でしょ! てことです。人と人がいつ出会っていつ別れようが本来自由なんだから。でも親子となるとそうはいきませんわ……。

 結婚って、国家の将来設計への参画ですよね。子ども中心に家族編成すべきなのは当然のこと。結婚したと称しながら子育ての計画を持たないカップルは、独身者と同じく、税制優遇だの貞操義務だの一切必要ないはずです

 というわけで、平等賛成、同性婚大いに結構。ただし、「同性婚を異性婚なみに引き上げろ!」じゃないでしょって話。逆でしょって話。「異性婚を同性婚なみに引き下げろ! いや、ともに権利義務をゆるめろ!」←これこそがLGBT運動の目標であるべきでしょう。

(三浦俊彦)

◆三浦俊彦(みうら・としひこ)
1959年生まれ。東京大学総合文化研究科博士課程単位取得退学。現在、東京大学文学部教授。専門は、美学・分析哲学。和洋女子大学名誉教授。著書に『エンドレスエイトの驚愕: ハルヒ@人間原理を考える』(春秋社、2018年)、『改訂版 可能世界の哲学――「存在」と「自己」を考える』(二見文庫、2017年)など。

1959年生まれ。東京大学総合文化研究科博士課程単位取得退学。現在、東京大学文学部教授。専門は、美学・分析哲学。和洋女子大学名誉教授。著書に『バートランド・ラッセル 反核の論理学者:私は如何にして水爆を愛するのをやめたか』 (学芸みらい社、2019年)、『エンドレスエイトの驚愕: ハルヒ@人間原理を考える』(春秋社、2018年)、『改訂版 可能世界の哲学――「存在」と「自己」を考える』(二見文庫、2017年)など。
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