本当にあった「眼帯」にまつわる超怖い話 ー 死んだ少年が付いて来る…川奈まり子の実話怪談『僕の左に』

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イメージ画像は「Getty Images」より引用

 いわゆるモノモライの類には違いないが、諭司さんが罹ったのは霰粒種(さんりゅうしゅ)といって患部に脂肪が溜まる病気だった。これに罹ると、薬だけでは治らないことが多い。しかも彼の場合は、脂肪の塊が固い肉腫になって結膜側に突き出しているので、このまま放置すれば眼球を傷つける可能性もあるという説明を医師から受けた。

 結膜側と皮膚側を少しずつ切って患部を除去し、6日後に抜糸することになった。

 手術が終わって看護師に眼帯を着けてもらうと、当然のことだが、左側の視界が欠け落ちた。世界の左側がブラックアウトして、視野が半分になった。

「明日になったら眼帯を外しても構いませんが、抜糸するまでテープを剥がさず、患部に触らないようにしてくださいね。内出血の痣や腫れが気になると思いますから、人前に出るときは眼帯された方がいいかもしれません」

 眼帯は初めてだと言うと、遠近感が掴みづらいので段差に気をつけるようにと看護師に注意された。

 しかし、まずは視界の狭さに戸惑った。

 ただ見える部分が減っただけではない。すぐに、黒く塗りつぶされた自分の左側に厭な不安感が渦を巻いているような心地がしてきた。

 さらには、病院の会計を済ませる頃には、それが人の形を取りはじめた。

 ――左側に誰かいる。

 もちろん気のせいだ。その誰かというのが自分の胸ぐらいの背丈で、どうやら子どものようだということを含めて妄想に過ぎないと諭司さんは冷静に考えようとした。苦手な病院に来て、初めて外科手術を受け、眼帯も初体験。だから自覚している以上に強い不安を感じていて、そのせいで変な幻想を抱いてしまうのだろう……と、合理的な枠から思考がはみださないように努めた。

 しかし、眼科病院の建物を出る頃には、左横の子どもの顔つきまで思い浮かぶようになってしまった。

 頬が丸く膨らんだ、下がり眉の男の子。硬そうな直毛をスポーツ刈りにして、むっちりと肉の詰まった体つき。なんとなく柴犬を想わせる風貌の子どもだ。

 ――圭くんなのか?

 横断歩道で青信号を待つ間に、心の中で問いかけながら左側を振り向いた。

 誰もいない。いるわけがなかった。

 前を大型トラックが通りすぎた。

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