本当にあった「眼帯」にまつわる超怖い話 ー 死んだ少年が付いて来る…川奈まり子の実話怪談『僕の左に』

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イメージ画像は「Getty Images」より引用

 諭司さんは、子どもの頃に体験した、とある出来事を思い出さずにはいられなかった。

 横浜という所は昔から人口の多い、開けた土地だったが、平成時代に入り急速に郊外の宅地開発が進展した。

 清水諭司さんの実家も横浜市郊外の新興住宅地にあり、土埃が立つ造成地と大型トラックや工事車両が彼の原風景になった。幼い頃は、近所でいつも工事をしていて、ヘルメットを被った作業員を見かけない日はなかった。

 圭くんは、諭司さんの家の斜め向かいに住んでいる同い年の男の子で、母親同士が親しかったことから自然に仲良くなった。物心つく頃にはもう一緒に遊んでおり、同じ幼稚から同じ公立の小学校にあがった。自転車はお揃いで、同じデザインの運動靴を履いていた時期もある。

 5歳くらいまでは、圭くんの方が諭司さんより体が大きくて気が強かった。だから小学校に入学してから圭くんがいじめられがちになったのは、初めはとても意外なことに思われた。

 確かに、圭くんは学校の成績が悪かった。字の形が覚えられず、いつも計算を間違った。劣等感が彼の表情を暗くした。

 だからと言って、いじめられていいはずがないけれど……。

 幼稚園の頃、圭くんはいつも諭司さんの右側にいた。圭くんの方がリーダー格で、遊びを仕切っていた。「うちでゲームをしよう」と圭くんが言えば、諭司さんは従った。それで何の不満もなかった。

 しかし小学生になると2人の関係性は少しずつ変化して、いつの間にか諭司さんが圭くんを引っ張る雰囲気になってきた。気がつけば、圭くんは諭司さんの左側に付き従っていた。気の利いた提案をするでもなく、遊びに誘えば乗ってくるが、自分から愉快なことを仕掛けてはこない。

 そんな受け身な性格の圭くんを物足りなく感じだした小2の9月のこと。二学期の始業式があった日の帰り道で、諭司さんは圭くんから走って逃げたのだった。

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