小5で死んだ同級生の”名前”に30年以上つきまとわれた超怖い話 ― 川奈まり子の実話怪談「リピート」

作家・川奈まり子の連載「情ノ奇譚」――恨み、妬み、嫉妬、性愛、恋慕…これまで取材した“実話怪談”の中から霊界と現世の間で渦巻く情念にまつわるエピソードを紹介する。

【十七】リピート

小5で死んだ同級生の名前に30年以上つきまとわれた超怖い話 ― 川奈まり子の実話怪談「リピート」の画像1

 自分が知っている人の名前を思いがけないところで耳にしてハッとした経験がないだろうか? 

 私は、ある。いつだったか、そう遠くない以前のことだが、病院の待合室でかつて交際していた男性の名前が呼ばれるのを聞いた。彼だろうかと思い、おそるおそる振り向いたが、見ればまったく違う人だった。

 これだけなら驚くほどのこともない。しかし、こんな偶然が何度も繰り返し起きたら、どうだろう? 

 ただの偶然だと割り切るにも限度というものがありそうな気がする。

 42歳の高橋聡さんは某スーパーマーケットの配達員。目黒区内にある支店を拠点として、目黒区・品川区・港区・渋谷区など東京都南部の地域を担当して品物を配達してまわっている。

 配達先は件のスーパーマーケットと会員契約を結んだ個人のお宅で、集合住宅の中の一戸であることも多く、同じ建物内に複数、配達先がある場合も珍しくない。会員は一日5便のうち1つを選んで注文できるため、高橋さんは日に何度も同じ道を往復することもあるという。

 この仕事に就いたのは3年前で、それまでは物流会社のドライバーをしていた。その前は宅配便のドライバーだったそうだから、高橋さんの職業はセールスドライバーということになるだろう。

 セールスドライバーは、配達や集配と料金回収、時には営業などを輸送車の運転とセットで行う仕事で、顧客と接する場面が多く、サービス業的な側面を持つ。従って、職場によっては、運転技術だけではなく、礼儀正しさや愛想の良さも重視される。

 たとえば、今、高橋さんが働いている某スーパーマーケットでは、会員との対話を大切にせよと言っている。

 単に愛想よくしろというのではない。配達員と人間的なつながりができると他の宅配スーパーマーケットに鞍替えしづらくなるだろうという、会員の心理を読んだ企業戦略として、配達員に勧告しているのだ。

 偶然、会員さんに道端ですれ違っても即座に名前が出てくるようになれば理想的だと、高橋さんはここに勤めはじめたとき上司に言われた。

 幸いなことに彼は人の顔や名前を記憶するのは得意な方で、この点で苦労したことはないという。

「もちろん、スーパーの宅配を始めてからは、意識して憶えるようにしています。でも、どうしても苦手だという同僚もいるから、ある程度は生まれつきの能力なのかも……。しかし、誰しも、忘れたくても忘れられない名前や顔というのも、あると思うのです」
「一般的に、離婚した相手や大嫌いな先生や何かは、そういうことになりそうですね」
「じゃあ、もしも川奈先生に、小学校のときに事故で亡くなってしまった同学年の子がいたとしたら、どうですか?」
「うーん……。難しいところですね。私は薄情な人間だから、仲が良い子じゃなかったら忘れてしまうかもしれません!」
「そうですか。僕は、取り立てて仲良しではなかったんですけど、憶えていました。小5の三学期に亡くなった女子です」

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