小5で死んだ同級生の”名前”に30年以上つきまとわれた超怖い話 ― 川奈まり子の実話怪談「リピート」

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画像は「Getty Images」より引用

 私鉄の上り電車に乗っているとき、つり革につかまって窓を見たら、自分の隣に赤いランドセルを背負った小学生の女の子が映っていたのだ。

「後ろ向きでした。慌ててそっちを振り向いたら、小柄なおばあさんが驚いた顔をして僕を見あげて……。見間違いだったか、と。それから窓を見ても、おばあさんがこっちを向いて立ってるだけだったし、見間違いだと思うしかありませんでした。だけど、電車を降りて、駅のホームを歩きだしたら、人混みの中に赤いランドセルが見え隠れしたんですよ!」
「そのとき、何時ぐらいでしたか?」
「夕方でした。蕎麦屋の後、ちょっとだけ実家に顔を出したから……」
「だったら電車通学の小学生に遭っても不思議ではありませんよね?」
「……ええ。偶然ですよね。だけど僕は気になって気になって……」

 無理もないと私は思った。高橋さんは、それからも同姓同名の女性に遭遇しつづけているのだから。

「最近も同姓同名の女性に遭遇しましたか?」
「ええ。スーパーの宅配を始めて半年ぐらいした頃、新しく加わった会員さんのお名前がそれで今でも顧客です

 スーパーマーケットの宅配では何度も——場合によってはほとんど毎日——配達員と担当地域の会員が顔を合わせることになる。

 スーパーの宅配サービスは生鮮食品とトイレットペーパーや洗剤、紙オムツなどの日用品を取り扱うもので、乳幼児や介護が必要な老人がいる、あるいは共働きであるという場合に非常に便利だ。インターネットで朝のうちに注文すれば即日配達も可能で、配達時間も指定できる。

 私も子どもが小さかった頃は週に何度も配達してもらっていたし、最近でも仕事が立て込んでくると普段の生活に必要なあれやこれやを注文している。

「この鈴木優里杏さんは、初めてうちのスーパーの会員になった方でした。他所ですでにうちの宅配を利用されていた会員さんが、僕の担当エリアに引っ越してくることもあるわけですが、この人は違いました。僕と同世代で、ご結婚されていて、小学生の娘さんがいる人です。……それでね、川奈さん……僕はこの人を担当してしばらくして、あることに気がついちゃったんですよ」
「なんでしょう?」
娘さんが、死んだ鈴木優里杏さんに生き写しなんです。配達で伺うのはいつも夕方5時過ぎから7時の間で、お子さんが学校から帰ってきていて、お母さんのお手伝いとして、僕が持ってきた荷物を玄関から部屋の中に運んだりする……その顔や姿かたちがね……どうも似ている。そう思えば、お母さんも、なんとなく面差しが死んだ鈴木優里杏さんに似通っている。名前は同姓同名で、容貌も似ているなんて、ありえますか?」

 私は高橋さんの勢いに呑まれて、少し沈黙した。

 うっすらとした狂気を感じたと言えば、高橋さんに失礼だろうか。しかし、ありえるかと問われたら、ありえないとは言えないと答えるしかないと思われた。

 非常に確率の低い偶然。しかし絶対に無いとは言えない程度の……。

「川奈先生。僕はゾッとしましたが、少し嬉しく感じたんですよ。この鈴木さんは、大金持ちではないけれど、どちらかと言えば経済的にゆとりのある暮らしぶりの人で、娘さんも躾が行き届いていて、明るいご家庭なんです。生きていたら、こんなふうな大人になったんじゃないか、こういう家庭を築いたんじゃないか……。そう思うと、僕は未だに独身なせいか、なんだかとても楽しくなって、それで……実家に帰ったときに鈴木さんの写真が無いかどうか、古いアルバムを探してみたんですよ。そしたら、ありました! 遠足のときの集合写真や運動会のスナップに、鈴木さん、写っていましたよ! それで配達先の鈴木優里杏さんのお嬢さんと見比べてみたら、やっぱり瓜二つです! こんな偶然ってありえないですよ! 奇跡です! 鈴木さん、僕のことがそんなに好きだったのかなぁ?」
「……そうかもしれませんね」
「だからね、僕は鈴木さんのお宅に行くときは特別に注意して安全確認しています。だって僕はトラックを運転しているわけでしょう? 僕のトラックで、もしも万が一、あの子を轢いてしまったら、悲劇をリピートしちゃうじゃないですか。でも、どういうわけか配達のたびに事故の場面を想像してしまうのでね……。だからもう、僕は、よくよく気をつけないといけないと思って……」

文=川奈まり子

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■川奈まり子
東京都生まれ。作家。女子美術短期大学卒業後、出版社勤務、フリーライターなどを経て31歳~35歳までAV出演。2011年長編官能小説『義母の艶香』(双葉社)で小説家デビュー、2014年ホラー短編&実話怪談集『赤い地獄』(廣済堂)で怪談作家デビュー。以降、精力的に執筆活動を続け、小説、実話怪談の著書多数。近著に『迷家奇譚』(晶文社)、『実話怪談 出没地帯』(河出書房新社)、『実話奇譚 呪情』(竹書房文庫)。日本推理作家協会会員。

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コメント

4:匿名 2019年3月7日 00:43 | 返信

この話とはちょっと違うが、子供の頃不思議だった事が。

兄弟喧嘩や病気・怪我をすると、それとそっくりの状況のドラマやニュースがTV・ラジオで放送される事が多々あり、子供心に「なぜ自分の家の事を知っているのだろう?」と不思議に思った事がある。今思い出してみると、ただただ薄気味悪い体験。まるでトゥルーマン・ショー。

この世は作られた現実なのではないか?今でも時々、その時の感覚を思い出す。

3:匿名 2019年3月6日 22:54 | 返信

婚姻状態にある女性?
姓は?

2:匿名 2019年3月6日 22:51 | 返信

不気味な話しだな

1:匿名 アララギ結城(仮名) 2019年3月6日 16:14 | 返信

記事を読んで思い出した話。
はじめてラジオを買ってスイッチをいれた途端、同姓同名を呼ばれる。しかも同じ町に住んでると!
私自身あまりある名前ではない上同じ町に?と、少し気味悪く思ったものだった。

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