小学校で死んだいじめられっ子が目の前に出現! 家族を巻き込んでの“恐怖”に…川奈まり子の実話怪談『僕の左に』
9月初旬、圭くんの命日直後の土曜日に諭司さんは両親と共に墓参りをした。
母が事前に、霊園を管理している寺院の住職に相談しておいてくれたので、墓参の前に寺の本堂で読経してもらい、その後、住職と話をすることが出来た。諭司さんは迷った挙句に、圭くんの幽霊については伏せて、ただ、最近になって急に思い出したのだと話した。
すると住職は、「少し驚かれるかもしれませんが」と前置きして、数ヶ月前に圭くんの母親が亡くなったのだと諭司さんたちに告げた。
「これからお墓に参られましたら、是非、お母さまにもお花を手向けてください」
諭司さんの両親もこのことは知らなかった。衝撃に、心持ち青ざめながら、母が住職に訊ねた。
「私たちと同世代で、まだ亡くなるようなお歳ではないのに、なぜ……?」
「詳しいことは存じ上げないのですが、ご病気だったそうですよ。長く患っていたので、これでようやく楽になりました、と、ご主人がおっしゃっていました」
「では、今年が初盆だったのですね?」
「そうですね。しかし、何か事情があったのか、どなたもお見えになりませんでした。毎年必ずご両親お揃いでいらしていたので、少し心配しております」
「そうですか……」
驚きが冷めやらぬまま、住職に導かれて霊園を歩いた。
圭くんの家の墓が見えてくると、諭司さんは歩きながら左手を横に伸ばした。冷たい手が掌に滑り込んできて、自分の指と細い指を絡め合わせてきた。
――圭くんと手を繋いだのは幼稚園のとき以来だな。
「諭司」と後ろを歩いていた母に小声で呼ばれた。振り向くと、母が怯えた表情で圭くんの方を見つめていた。
「そこに白い影が……子どもの形で……あなたと手を繋いで……」
「白い影?」
諭司さんは眼帯を外して、圭くんを見下ろした。圭くんは、生きていたときと変わらない、健康的な男の子の姿をしていた。
「お母さんにはそう見えるんだね」
しかし不思議なことに、お墓の前に来ると、圭くんの姿は白っぽく薄れてきたのだった。
諭司さんは手を合わせて圭くんとその母を悼み、冥福を祈った。目を閉じると、幼い頃に圭くんと過ごした楽しい想い出ばかりが次々に頭に浮かんだ。最後に心に映ったのは、子ども部屋から見た夕焼け空と圭くんの家。2階の窓から圭くんが手を振っている。
――バイバイ、圭くん! バイバイ!
目を開けたとき、圭くんの姿は消えていた。
眼帯を着けても気配が感じられなかった。自分の左側にはあるのは虚しい空間でしかなく、諭司さんは喪失感を覚えた。
涙が溢れてきた。彼は子どものように泣きじゃくった。
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2024.10.02 20:00心霊小学校で死んだいじめられっ子が目の前に出現! 家族を巻き込んでの“恐怖”に…川奈まり子の実話怪談『僕の左に』のページです。目、川奈まり子、情ノ奇譚、左などの最新ニュースは好奇心を刺激するオカルトニュースメディア、TOCANAで