小学校で死んだいじめられっ子が目の前に出現! 家族を巻き込んでの“恐怖”に…川奈まり子の実話怪談『僕の左に』

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作家・川奈まり子の連載「情ノ奇譚」――恨み、妬み、嫉妬、性愛、恋慕…これまで取材した“実話怪談”の中から霊界と現世の間で渦巻く情念にまつわるエピソードを紹介する。

【二二】『僕の左に』(下)

イメージ画像は「Getty Images」より引用

 

※前回までのあらまし29歳の会社員、清水諭司さんは、ある夏、いわゆるモノモライをこじらせて手術を受けた。手術後に眼帯をつけると、左側の視界が欠け落ちたかわりに、幼い頃仲の良かった圭くんの気配を感じるようになる。そこで思い出された辛い記憶は、小学生になった圭くんがいじめられるようになり、諭司さんも圭くんを避けたその日、圭くんはトラックに轢かれて亡くなったことだった…

 

 土曜の夜は自宅マンションに帰ったが、やはりベッドに横になると左隣に子どもが寝ているような気がした。朝になると、タオルケットが左側に引き寄せられていて、辺りにうっすらと子どもっぽい体臭が漂っていた。

 日曜日には、左腕にそうっと触られて、寝入りばなを起こされた。

「圭くんなの? そこにいるんだろ?」

 思わず振り向いて問いかけたが、返事はなかった。

 ――もしかすると、圭くんはあの日、死ぬのと同時に、走って逃げる僕に追いついたんじゃないか? そしていつもみたいに僕の左に並んでいたのでは?

 この現象を指して「罪の意識がそういう幻覚を見せている」と諭司さんの父は解説した。

 昨日、それを聞いたときには、かつて掛かった心療内科や精神科の医者が言いそうなことだと諭司さんは感じた。封じていた後悔の念が幻覚を生むというのは、常識で許容できる範囲内だとも思われた。そして、このような、常識的な現代人らしい考え方にこだわりたいと、こだわるべきだと考えたのだった。

 しかし、日々刻刻と左側の子どもは存在感を増していく。

 ベッドから下りて洗面所へ行き、鏡を見ると、自分の左側はただの空間だった。そこに圭くんが存在している感じは依然としてあるのだが。

 ――眼帯を外したら、圭くんの気配も消えるのだろうか?

 それまでは無意識に傷に触ってしまうのが怖くて、寝ている間も眼帯を着けていたのだ。しかし明日は抜糸する予定だ。もう傷口は塞がっているだろう。

 諭司さんは鏡を見ながら眼帯を外してみた。

 途端に開けた視界の左側に……いた。

 8歳のままの圭くんが佇んでいた。鏡越しにこちらを見つめている。無表情だ。

 諭司さんは震える手で再び眼帯を着けた。すると、鏡の中の圭くんは消えた。しかし、立ち去ってくれたわけではなかった。

 左腕を下にさげると、掌の中に手がするりと滑り込んできた。氷のように冷たくて、小さな手が。

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コメント

1:匿名 2019年9月16日 21:24 | 返信

哀しい話だったけれど最後に救われた。
誰かを傷つけたり傷つけられたりは人間の性。私達は赦したり赦されたりしながら人生を生きていく。

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