小学校で死んだいじめられっ子が目の前に出現! 家族を巻き込んでの“恐怖”に…川奈まり子の実話怪談『僕の左に』

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イメージ画像は「Getty Images」より引用

 月曜日には、会社の休憩時間を利用して眼科で抜糸してもらった。

「治りが早いですね! もう眼帯は必要ありません。まだ内出血の痕が目立ちますから着けても構いませんが……。霰粒種は初めてなんですよね?」

「はい」

「しょっちゅう出来る体質の人がいるんですよ。清潔を保つことと栄養バランスがとれた食生活を送るように心掛けてください。あとは睡眠! よく眠ることが大事です」

 まさか、ここで幼馴染の幽霊につきまとわれているせいで安眠できないとは言えない。しかも眼病がきっかけでそうなったなどと話したら、精神科に行けと言われるのがオチだ。

 眼帯を着けて会社に戻った。仕事をしながら、完治しても圭くんが去らなかったり、或いは頻繁に霰粒種が再発してしょっちゅう今のような状態に陥ったりする可能性を考えて、怖くなった。

 今週末に圭くんの墓参りに行くつもりだったが、果たしてどうなるか……。

 会社に戻ると、上司から「どうだった?」と訊かれた。

「抜糸しました。もう眼帯は必要ないそうです。ただ、アザになっていて見苦しいので、仕事中は着けていようと思います」

「取引先の人に会うとき以外は外していても構わないよ。わずらわしいだろ? ちょっと見せてみろ」

 諭司さんは「はあ」と答えて眼帯を外した。恐々と足もとに視線をさまよわせると、左側に、運動靴を履いた子どもの足が見えた

「うわぁ。痛そうだな! 殴られたみたいで、穏当じゃないなぁ」

「もうしばらく眼帯しておきますよ」

 眼帯を元に戻すと、視界から圭くんが消えた。気配は残っている。

 トイレに立ったときに鏡の前で眼帯を外してみたら、横に圭くんがいた。鏡に映り、振り向くと実際にも自分の目には見える。

「おつかれさま」と同僚がやってきて、圭くんのそばを通って小便器の方へ行った。……他の人には見えないのだ。

「メバチコ、僕もなったことがありますよ。そこまで酷くならなかったけど」

「外側を切りましたから、痣がね……」

「デスクで作業しているときは外していてもいいんじゃないですか? みんなすぐに見慣れると思うし……アザより眼帯の方が目立つかもしれない」

 確かにそうかもしれないと思った。圭くんの姿にも慣れてきた。初めの頃ほど恐ろしく感じない。「いるな」と認識するだけになりつつある。

 その日から、通勤のとき以外は眼帯を外すようになった。

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