ナチス人体実験から始まったドーピングの歴史を徹底解説! ジョン・ボスリー・ジーグラー医師と魔法の薬ダイアナボル

■ドーピングの手引き

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画像は「Getty Images」より引用


 ドーピングで難しいのは、体全体のバランスを維持しながら行わなければならないため、かなりの医学知識を必要とすることです。単純にダイアナボルだけを飲み続けると、確実に体のバランスがおかしくなります。

 副作用で無気力になるのは外部からの過剰摂取により、内分泌の中枢である視床下部が体内でホルモンが過剰だと認識して、下垂体前葉がホルモンを出せと命令するのを止めてしまい、精巣からの男性ホルモン分泌が止まるからです。

 体のホルモンバランスを元に戻すためには、男でも排卵障害による不妊症治療薬であるクロミフェン(選択的エストロゲン受容体調節薬)を飲む必要があります。ドーピングによって崩れたホルモンバランスを調節するために更に薬を飲まなければならなくなります。

 また、経口摂取用のダイアナボルには体内での分解を遅らせる17αアルキレート加工が施されているために、肝臓に負担をかけます。長期間服用すると肝硬変や肝臓癌などの肝臓障害になることもあり、長期服用には死病のリスクがついてきます。対策として肝臓を保護してくれるシリマリンを併用することが推奨されています。

 コレだけ見ると三種類の薬をいっぺんに飲めば大丈夫なのかと思いそうですが、実際には「ダイアナボルを何ミリグラム摂取した何時間後にクロミフェンを何ミリグラム摂取する……」と言った分量の加減と計算が必要で、これは素人に出来るレベルでは無いので飲みすぎて肝臓や心臓をやられて死ぬ人が後を絶ちません。

 ボブ・サップはワシントン大学で薬学を専攻していた薬学のプロであることをお忘れなく。

 真面目に思うんですけど、自由診療でドーピング外来とか始めたら儲かりませんかね? プロアスリートはダメですけど、マッチョになりたい一般人向けに医師がちゃんと管理して使用すればリスクは充分に抑えられます。

 ネット通販で売っている本物かどうかも分からない正体不明の薬より、医師が厳選したドーピング薬の方が絶対安全です。

 筋肉が全てを解決してくれるならいいんじゃないでしょうか?

文=亜留間次郎

薬理凶室の怪人アルマジロ男。人間の皮を被った血統書付きアルマジロ。守備範囲は医学から工学、ノーマルからアブノーマルまで幅広く、アリエナイ理科ノ大事典など、くられ氏と共に薬理凶室関連の共著多数。単著に『アリエナイ理科式世界征服マニュアル』(三才ブックス)がある。よくわからないケダモノなのでよくわからないネタで攻めていきます。

公式サイト http://asai-laboratory.sakura.ne.jp/
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