女性でも男性でもない「Xジェンダー」を確率論的に考察! 二封筒問題から考える性自認の公共性/東大教授・三浦俊彦

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画像は「getty images」より引用

 ノンバイナリー、あるいはXジェンダーと呼ばれる性自認がありますね。身体の性別はハッキリしていても、性自認は男女の中間、両方、どちらでもない、ときによって変化……いろんな種類があるようですが、ともかく男とも女とも決められない性自認です。

 そういう人たちって、数学者タイプの感性を備えてるのか?……と思うことがあります。といきなり言われても、意味がわかりませんよね。ご説明しましょう。

 これから数学の問題を2つ考えていただきます。「健康診断問題」と「2封筒問題」。まずは簡単な方の、健康診断問題から。

 あなたは健康診断で、1万人に1人がかかる致命的な病気Kの検査を受けました。精度の高い検査で、99%は正しい結果を出します。さて、あなたの検査結果は、陽性でした。あなたが本当に病気Kである確率は?

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三浦俊彦教授

「99%」と即答した人。もう少し考えてください。健康診断を受けた人数を100万人とするモデルを作りましょう(1億人でも、100億人でも結果に影響ありません)。病気Kは1万人に1人だから100人が該当。病気Kでない人は残りの99万9900人。検査結果が正しい確率は99%だから、病気K100人のうち陽性は99人。検査結果が間違っている確率は1%だから、病気Kでない人99万9900人のうち陽性は9999人。つまり陽性は(99+9999)人いることになります。その中の1人があなたです。そのあなたが病気Kである確率は、(99+9999)人のうち99人に属している確率ですね。計算すると、102分の1が正解です。つまり1%未満。

 この問題のポイントは――病気Kの証拠となる「検査結果が正しい確率」だけに気を取られて、検査結果が出る前の有病率、つまり「事前確率」を見過ごす、という誤りへの警告です。一度陽性が出たからといって、絶望するのは早すぎるんですね。

 改めて、計算式は次のようになります。記号を避けると長ったらしくなりますが……

 陽性になった場合の病気Kの確率=病気Kでかつ陽性になる事前確率/(病気Kでかつ陽性になる事前確率+病気Kでなくかつ陽性になる事前確率)=0.01×99/(0.01×99+99.99×1)=1/102

「検査前に特定の人が病気Kである事前確率(%)」としての0.01という数値が大きな役割を果たしていることがわかります。

 この健康診断問題の教訓を踏まえて、「2封筒問題」に取りかかりましょう。

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画像は「getty images」より引用

 見分けのつかない2つの封筒を差し出されました。それぞれ小切手が入っていて、一方が他方の2倍の金額であり、あなたは1つだけもらえます。そして、一方の金額だけを見ることが許されます。あなたは左の封筒を取り、開封すると「10,000円」でした。これをもらうのが得でしょうか、それとも、右の封筒をもらう方が得でしょうか。

 ちなみに未開封の状態では、交換しても損得ありません。取った左の封筒にはA円、右には2倍の2A円。あるいは、左に2A円、右に半額のA円。それぞれ確率は1/2。交換、未交換ともに、獲得金額の期待値は3A/2円。損得なし。常識に合っていますね。

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画像は「getty images」より引用

 この問題の厄介なところは、開封すると事情が変わることです。左には確率1/2でA円、確率1/2で2A円があるのでした。開封して1万円だったので、確率1/2でA=10,000、確率1/2で2A=10,000。つまり右の封筒には確率1/2で2万円、確率1/2で5千円。交換したときの期待値は、12,500円。交換しないともちろん10,000円。交換した方が得ですね!

 しかし……、開封した途端に「交換で損得なし→交換が得」と変化するとは、なんとも不可解な感じです。とはいえ、推論のどこも間違っているように見えません。

 この2封筒問題は悪名高い難問で、「炎上するのでこの問題はお断り!」と但し書きしているBBSを複数見たことがあります。

プレスリリース入稿はこちら サイゾーパブリシティ