次々と人が死ぬ団地の隣人にまつわる超怖い話 ー 川奈まり子の怪談『隣人たち』

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画像は「Getty Images」より引用

 2004年に、マツモト老人の妻が亡くなった。癌による病死だった。

 それ以降、マツモト老人の言いがかりの内容が変化した。

わしの部屋に合鍵を作って入ってきたやろう?」

「わしの布団で寝とったな!」

「風呂に入っとったやろ?」

 そんなことを、敏則さんの母に執拗に言ってくるようになったのだ。

 また、マツモト老人の部屋の真上に住む人は「不気味でたまらへん。毎晩丑三つ時になると、決まって下からおりんをチーンと鳴らして読経するのが聞こえてくるんやで」と敏則さんにこぼした。

 さらにまた、これは御盆の時季のことだが、真昼間にマツモト老人の部屋から絶叫が聞こえてきた。

 ぎゃあと叫び、続けて何か大声で喚いている。ひどく怯えているように聞こえ、途切れ途切れに30分以上も続いたので、マツモト老人が普通の大人しい隣人であれば放って置かなかっただろう。

 しかし、関わり合いになるのが厭だったので、敏則さんと母は、無視した。

 ――この状況がその後、去年の7月まで続いた。

 ここまで話すと、敏則さんは「マツモト老人のうちで、何が起こっていたんだと思います?」と私に訊ねた。

 私は、「妻の幽霊が出ていたのかもしれませんね」と、そのとき答えた。敏則さんも「そうかもしれませんよね」と納得したようすだったが、後になって、煙草の吸殻などの言いがかりをつけてきた原因も霊の仕業だったのでは……と、ふと思いついた。

 ちょうど祇園祭の頃にマツモト老人は彼の世へ旅立った。合鍵を渡されていた派遣ヘルパーが遺体を見つけたということだ。マツモト老人は100歳に近く、後に死因は老衰だったと判明したが、そのときは警察が呼ばれて、敏則さんと母も事情聴取を受けた。

 敏則さんはマツモト老人が死んで、正直言ってホッとした。

 ところが、その日の夜から、母の様子がおかしくなった。

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