本当にあった北九州の「呪われた村」の怖い話が本当に恐ろしい! 馬の首、見てはいけない岩…実話怪談「血蟲の村」!

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画像は「Getty Images」より引用

 美津子さんの母がここに来て驚いたことのひとつに、亥の子祭という秋の年中行事があった。まず、関東以北の地方では亥の子にまつわる行事を行わないことが多いし、イノコと聞いても何のことかわからない人も少なくないのだ。

 西日本や九州の人々にとっては意外かもしれないが、彼の地ではよく食べられてきた亥の子餅ですら関東から北に入ってきたのは江戸時代以降で、現在もあまりポピュラーではない。

 だからまず、そういう行事を行うということに驚いた。けれども、それ以上に衝撃を受けたのは、そこで唄われる唄だったのだという。

「亥の子の晩に祝わぬ者は、鬼を産め! ジャを産め! 角の生えた子を産め!」

 ……と、集落の少年たちが家々を巡りながら戸口で合唱するので、美津子さんの母は初めて聞いたときには震えあがってしまったそうだ。

 嫁いできて、さあこれから子どもをつくろうという頃だったから、尚更恐ろしく感じたのだろう。

 鬼を産め、角の生えた子を産めというのも恐ろしいが、ジャは「蛇」だろうか、それとも「邪」だろうか。いずれにしても、これ以上酷い脅し方はあるまい。

 亥の子祭の夜になると、男の子たちが戸口を訪れて、この唄を大声で唱えながら、1メートルほどの長さの太縄で地面を叩くのだ。訪ねられた家の者は出ていって言祝ぎ、お菓子を手渡す。不思議と西洋のハロウィンの行事に似ているが、本来はお菓子ではなく亥の子餅をあげていたのかもしれない。

 亥の子祭は地域ごとに特色があり、祝い方が様々あるという。亥の子餅は旧暦10月亥の日亥の刻に餅を食べる古代中国の縁起事に由来するとも言われ、地面を叩くのは景行天皇が椿の槌で地面を搗いて土蜘蛛族を殲滅したことを模しているとも、田の神を天に返すためとも伝えられる。

 猪の多産にあやかる意味もあるというのだが、だったらこの唄は何なのだ、と、美津子さんの母は「うっかりして呪われた村に来てしまった」と後悔した。

 それを聞いた美津子さんの父は、昔からやってきたことで、自分も子どもの頃にはあの唄を唄ってお菓子を貰ったものだ、と、笑って取り合わなかったとのことだ。

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