本当にあった北九州の「呪われた村」の怖い話が本当に恐ろしい! 馬の首、見てはいけない岩…実話怪談「血蟲の村」!

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画像は「Getty Images」より引用

 そして、ある晩、とうとう美津子さんは子ども部屋の窓から岩を見てしまったのだった。

 最初は何もなかった。群青色の夜空に黒々と岩のシルエットが浮き出し、山の樹々が夜風に梢を揺らしている……。

 と、突如、岩の上にとても小柄な、おそらくは自分と同じぐらいか幾つか小さい子どもであろう人影が立った、と思うや否や、飛び降りた。

 下は断崖絶壁だ。落ちたら死んでしまう!

「お母さぁん! たいへん、たいへん!」

 美津子さんはすぐさま母のところへ駆けていって、岩から子どもが落ちたことを報告した。

 すると母はたちまち憤怒の形相になり、美津子さんの頬を平手で叩いた。

「なんてことを……! 見るなと言ったのに! あれを見たら、次にあそこから落ちるのは美津子、あんたなんだよ!

 そう言って泣き崩れ、美津子さんを抱きしめたのだが、美津子さんは平手打ちされたショックが大きく、混乱して泣くばかりだった。

 ――実は、昔、この辺りでは飢饉になると、口べらしのために子どもをあの岩から落として殺していた。そのためあそこには呪いがかけられ、夜になると子どもの影が岩から落ちる。

 その影を見てしまった子どもは、その翌日の夜になると、岩から落とされて死んでしまうのだ。

 だから子どもは絶対に、夜にあの岩を見てはいけないのだという――。

「……そういうことは、お祓いが済んだ後で聞かされたんですよ。母が泣きながら父を呼び、話を聞くと父は真っ青になって神主さんに連絡しました。それからすぐに私を抱きかかえて神社に連れていってお祓いしてもらったんですが、そのやり方が普通ではなくて……。

 まず、両親と神主さんとで、怯えて厭がる私を、境内にある小さなお宮に押し込みました。窓が無くて、広さは一畳ぐらいでした。床の隅にひとつだけ排泄用の穴があって、あとは食べ物や飲み物を入れるための小さな出し入れ口があるだけです。潔斎や何か、修行のためのお宮なんでしょうか? 神降ろし用の小屋とは、場所も作りも違います。

 その夜は、そこで祓い串を頭のまわりでバサバサと振り回されながら祝詞が唱えられ、太鼓がドンドン打ち鳴らされて……。他の神職の方たちもやってきて、大騒ぎですよ。その時点ではまだ岩の由来も知らされていなかった私には、わけがわかりませんでした。怖くて怖くて、泣いているばかりで……」

 美津子さんは、その狭い小屋のようなお宮に三日三晩監禁された。

「母がときどき訪ねてきて、来ると壁を叩いてくれるんです。私も叩き返して、壁越しに会話したり、食事の間は壁の向こうにいてくれたりして、それだけが救いでした。あとはずっと、後悔しながらシクシクべそをかいていました。夜になると電気がないから真っ暗闇です。しかもお蒲団もないし、座布団すらない、板敷きの床で、お風呂も入れないわけですよ……。今なら児童虐待って言われちゃいますよね? でも当時は両親も神主さんも真剣でした。本気で私を救おうとして、そのために閉じ込めたんです」

 ——魔に攫われないように。

 それからしばらくして、美津子さんが10歳の頃に、山の分校に通っていた男の子が、岩から落ちたと思しき遺体で発見されるという事件があった。

 その子の自宅はこの近所ではなく、徒歩圏内ではあるが少し離れており、そもそも子どもが何の装備もなしに、ましてや夜、あの岩に登るのは難しいはずが、深夜、ひとりで登って落ちたとしか思えない状況で、見つかったときはすでに無惨な姿で事切れていたとのことだ。

 夜に、岩から落ちる子どもの影を見てしまったのだろうか……。

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