身長2m以上の白いドレスの巨大女が佇む、本当にあった怖い話 ー 『でる家』川奈まり子の実話怪談!

川奈まり子の連載「情ノ奇譚」――恨み、妬み、嫉妬、性愛、恋慕…これまで取材した“実話怪談”の中から霊界と現世の間で渦巻く情念にまつわるエピソードを紹介する。

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画像は「Getty Images」より引用

<前編はこちら>

【二十八】『でる家』(後編)

 この出来事を、聡さんと弟は、両親に打ち明けることができなかった。

 厳粛であるべき弔いの場で、オバケが出たと言いだすのは気が引けたのだ。何をふざけているのかと叱られるのがオチだと思われた。

 しかし葬式が済むまで、弟と2人きりになるたびに、「怖いね」「もう出ませんように」と、揃って顔を引き攣らせながら囁き合ったのだという。

 その後、祖母の家はしばらくの間、空き家になった。

 父が相続したのだが、人に貸すでもなく、ただ所有して、税金だけを払っていた。両親の間ではその件について何か話し合われていたに違いないが、聡さんには知らされなかった。

 彼自身は、受験勉強で忙しく、それどころではなかった。

 だから、大学に合格して間もなく、「ずっと空けておくのももったいないから、おまえが住んでみたらどうだ?」と父が提案してきたのは青天の霹靂であった。

 父は、母とはすでに打ち合わせ済みで、ようするにこれが進学祝いということのようだとすぐに理解できた。

「いいの? やった! ありがとう!」

 祖母の葬儀から2年余りも経っていた。聡さんは、そのときには、もう、あの男の子のことはすっかり忘れ去っていたのである。

 彼は小躍りして喜んだ。祖母の家は家族向けに建てられた二階建ての建物で、庭まで付いている。今まで親から与えられていた6畳の子ども部屋とは解放感が大違いだ。好きなだけ友だちも呼べる。今はあてが無いが、恋人ができたら連れ込んであんなことやこんなこともできるだろう……。

 4月、自分の持ち物を祖母の家に運び入れて片づけが済むと、まずは高校時代からの親友を呼び寄せた。

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